短いコトノハ駄文
□ヤサシイウタ
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カチャカチャ。
泡立て器の規則正しい音と、心地良い歌声。
母がケーキを焼くときにキッチンから流れてきたもの。
幼心にひどくうれしく心地良いものだったか。
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「ヤサシイウタ」
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「…あら四月一日、随分楽しそうね」
キッチンから流れる鼻歌と甘い香りを嗅ぎつけて?黒モコナを肩に乗せ、緋色の着物を召した…願いを叶える不思議なミセの店主…壱原侑子は、バイトくんでアヤカシを惹きつける困った血を持つ四月一日君尋のいるキッチンにやって来た。
「侑子さんキッチン貸してくれて有り難う御座います。後でケーキ持って部屋に行きますから」
黒モコナがヒョイと降りて、台の上に置いてある湯煎で溶かしてあるチョコに近づいた。
「だーっ!、モコナ!」
ヒョイと溶かしチョコのボールを取り上げる。
「あら?市販のチョコなの?」
台の上にあるチョコの包みを取り上げる侑子。