短いコトノハ駄文
□花火
1ページ/6ページ
今この瞳に見えるのは、
闇空に咲いた
朱や蜜柑色や紫陽花色…
宝石の煌めきを帯びて
まるで降り注ぐように
「花火」
「…すごいな」
ビニールシートに寝ころんで、漆黒の空を見ている。
どんっ、て音が遅いか早いかしているうちに雨のように降ってくる…花火。
「な、すごいな」
隣で同じく寝ころぶ彼…百目鬼静に問うてみた。
「ああ」
大きな音に消されて彼の声は聞き取れないが…隣にいるという事が…妙にくすぐったいようなそんな気持ち。
「うわあ、またあがったって」
いちいちあがる度に声出すなんて、可笑しいかな?
「ほら〜」
ちょっと離れた所に仲の良い恋人どうし。
「…」
彼に聞こえないように小さく溜め息をおとす。
今ここにいるのは…四月一日君尋と百目鬼静の二人。
年に一度の花火大会。
ここは特別席で…花火の真下で見られるという特等席。