短いコトノハ駄文
□いつかへの願い
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きりり。
弓を引くときの緊張感……、一点を狙う瞬間のその緊張感が好きだ。
その刹那の静寂さが、沈黙が…。
自身が無になれるこの時が好きだ。
祖父が弓をやっていたせいか、幼い頃から目に入っていたからか、それを自然に選んだ。
自身の鍛錬の為とか、精神力を養う為なんて理由もあったかもしれない。
この頃少し変わった。
強くなりたい。
大切なものを守るために。
殊更に。
ただ強くなる事を望む。
その欲は尽きない。
「今日四月一日くん風邪でお休みだって。残念だね、お弁当楽しみだったのに」
四月一日と同じクラスである九軒ひまわりは昼休みに俺のところに言いにやってきた。
九軒と俺と四月一日のいつもの昼食。
それが決まりのようになっていた。
「明日はくるといいね」
そう言って九軒は去っていく。
不思議な違和感を漂わせる彼女は四月一日の想い人で。
仕方なく学食へ行く。
あいつ…四月一日は今頃何をしてるのだろうか?
飯食ってるのか?
日頃から学校とバイトで忙しいから、疲れでも出たのだろうか…。
明日になったらまたうるさいまでの声を聞かせてくれるだろうか?