コトノハの箱

□黄昏に君を想ひて…夜半の闘い篇…
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闇に煌めくその姿を見た時、私は身震いした。

身震いは決して恐怖ではなく、どちらかといえば快楽に近い体を走り抜けた痺れ。

閃光のように空を斬るその鈍色に、一瞬にして心奪われた為に。

その鈍色に魅せられた自分はどうしてもこの手でそれを生み出したかった。

何度も何度も鉄(かね)を打つたびに響く心の中に生まれる躍動感。

夢中で打った。

然し打っても打っても心は晴れない。

寧ろ曇りが増え、やがてそれは厚くなりどす黒くなった。


張り付くようなべったりとしたものに苛まれながらそれでも打ち続けた。


それを掬ってくれたのはある女性だった。
妻となった彼女は自分をどす黒い曇から掬いあげてくれた。

そして娘が生まれた。

鉄(かね)を打っても前のような事はなく…心から安堵した。





突然それはやって来た。

目の前の鉄(かね)は不思議な色合いを放ち一目でその心を動かした。

それをみた途端、狂ったのだと思う。


打つとそれは妖しい光を放つ。

何度も打ち、形が出来たそれは…余りにも妖しい美しさなのだ。

振りかざしてみれば、心に迫るものがある。

振り下ろせば、空を斬るその音さえ焼き付いて離れない。
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