長いコトノハ駄文
□倭文織(しずおり)の糸、綾織の糸
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「もう、大丈夫なのか?」
四月一日は、さりげなく自分に合わせるように気遣いながら歩く…百目鬼に聞いた。
「ああ、大丈夫だ…お前こそ肩の怪我は?」
「…まあ、偶にな」
「負ぶうか?」
「…絶対いやだ」
そんなやり取りをしていたら、見慣れた景色が見えてくる。
「帰ってきたんだ」
よく行く商店街も、学校まで続く道のりも、偶に寄る公園も、いつも通る道も…そんな風景が何か嬉しかった。
「行くぞ」
自分の住んでいるアパートとは逆の方向に進む百目鬼に、
「おれ、家に…」
「俺の家だ」
あっさりと四月一日は否定される。
「…あのなあ、おれ着替えとか」
「家に置いてあるの使えばいいだろう?俺の家は決定事項だ」
「お前な…」
呆れて歩みが遅くなった四月一日に、
「疲れたのか?…やはり抱き上げるか」
そう真面目な表情で言う百目鬼に、四月一日はこれはまずいと、「急いで行かせて頂きます」と言い、また歩きだした。