長いコトノハ駄文
□金色の時の間(はざま)に
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「一条さんも…大変でしたね」
四月一日は一条から視線をそらし、俯いた。
人には人それぞれ触れられたくない思い出や部分がある。
…そんな事を自分が聞いてしまって良いのかと、心の中で思った。
「…それから母親にも嫌がられ一族中転々と盥回しで、あるお寺の住職さまから…遙さまの処に導かれるように来たんだ」
煙草を片手に珈琲を飲む一条。
「遙さまの処に来た時はもう荒くれ者で…喧嘩、もめ事しょっちゅうだし厄介者で…でもあの一撃で悟ったよ…」
「前も言ってましたよね…金輪際遙さんには逆らわないって」
お盆を持ったまま、一条の向かい側の椅子に腰掛ける四月一日。
「…そう、この人だけは怒らせまいと」
そう言って一条はネクタイを少し緩ます。
…確かに。
四月一日には、あの彼の笑顔の下に激しさが秘められているのではとそう感じられたのだ。