長いコトノハ駄文
□金色の時の間(はざま)に
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「へえ…遙さんてそんなに怖かったんですか?」
四月一日は一条の前にシフオンケーキとブラックの珈琲を出した。
透明なガラスのテーブルには紫色の風呂敷包み。
四月一日は侑子のミセに届けものにやって来た一条の話を侑子が来るまでの間聞いているのであった。
「遙さまは静や大切なものを守る為なら手段を選ばない人だから」
一条は煙草をふぅ…と吹かした。
「確か侑子さんに渡した数珠は黒でしたよね」
「…オレの忌まわしい力を吸い取ってくれていたんだ…“狗神”の血は」
一条は遠い、寂しさの混じった目をした。
“狗神”は一条の一族代々祀ってきたもので…、人に悪夢を見せたり、害をなしたりするいわば邪なもの。
「父はその血を強くする為にオレを生贄として差し出したんだ…皮肉にも“狗神”はオレの右腕に刻印され、父は死んだ」
吐き出された煙は、部屋に広がっていく。