短いコトノハ駄文

□雛様小噺
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「おい」

取り出したものを見て、百目鬼は、四月一日を呼ぶ。

彼に促され、覗き込むと、…写真。

「…母さん」

写真には、この雛人形を背景に映る学生服を着て、にこやかに笑う女性。
四月一日の母は、彼によく似ていた。

四月一日は雛人形が母の物である事が嬉しく、箱の中から女雛を取り出し、包みを優しく開けた。

綺麗な顔をした、女雛。

「優しい顔してる」

四月一日の嬉しいそうな顔を、百目鬼は優しい視線で見守っている。

「…折角母さんの雛人形が見つかったけど、此処じゃ狭いし、どうするかな」

四月一日は、女雛の乱れた髪を拭って、綺麗にまとめる。

「そうだ、侑子さんのとこで…」

「うちに持ってこい」


百目鬼が、四月一日の言葉を遮るように、そう言った。

「…え、でも」

百目鬼の家はお寺だが、娘はいない。
それなのに?
四月一日は不思議に思った。
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