小説

□戦う理由
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僕が刀を手にし、命をかけるのは近藤さんのため、土方さんのため、
ただ・・・それだけのはずだった・・・

●戦う理由●


宰相との戦いを控え江戸の町を見回った後は、皆で休憩をしていた。
お茶を飲み、菓子を食べながら、どうでもいいような世間話をしていた。
ゆきや都たちが生活をしていた向こうの世界の話をした。また、チナミは、水
戸で兄や同志たちとの想い出を話してくれた。
そして、都がチナミのことを「ぼっちゃん♪」といえば、チナミが「違う!!」
と、二人の言い合いに全員が笑いだすほどであった。他の面々にも「ぼっちゃ
ん」とからかわれたチナミは、「高杉殿に、小松殿まで・・・」と少々沈んでし
まった。
場の空気を和ませようと、龍馬が新撰組に追われた時の話をした。

「そういやー、総司は初め俺のこと普通に切ろうとしたよな〜。きれいな顔した男に、刀持って追いかけられるなんて初めてだったぜ。」
「何だ坂本、きれいな男以外に追いかけられたことがあるのか?聞いたか、ゆ
き、こいつなんだかんだ言ってきっと、女のひとりやふたっ」
「違うんだ!お嬢!!店には行ったが、付き添いであって、俺一人じゃ!」
「なに、墓穴掘ってんだよ。あはは」

龍馬と都のやり取りに笑った。

「でも、本当に総司さんって、きれいですよね。・・・でも、強いですよね」

純粋に褒めたのは、他の誰でもないゆきだった。

「強さに顔は関係ないですから。それに、僕なんかよりもゆきさんの方がきれいですよ。」

総司に【きれい】だと、褒められたが、そのあとに「土方さんも口説きたいっ
て言ってましたし」なんて、付け加えられると嬉しさが半減した。もしかする
と、土方の基準で自分のことを【きれい】だと判断したのかも知れない。そん
な不安にも似た思いが心をかすめた。

ゆきの不安を感じ取ったのか、総司の口が再び動いた。

「まぁ、そんなことさせませんけどね。」

総司のその一言でゆきは不安そうな顔から、きょとんとした顔になり、そのま
ま真っ赤になった。そんなゆきに気がつかないまま「当たり前だ!!」という
都の声が響いた。




真っ赤なゆきに目をやりながら、総司は微笑んだ。

 僕が戦うのは、近藤さん、土方さんのため、それがなくなることはない。彼らのためになら命すら惜しくなかった。

・・・でも、僕はあなたのために戦いたい。
あなたの隣で命を惜しみながら、あなたと戦い、あなたを守りたい。

そう、この命を惜しむのは・・・あなたのためだけ・・・
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