小説
□呼び方1
1ページ/1ページ
ゆきの体を休ませるため、一同は宿で休憩していた。今回は、珍しく高杉もそろっていた。
あまり広いとはいえない部屋の中に男9人と女1人・・・いや、男8人、女2人である。
最近は怨霊を封印するため歩くことが多かったせいなのか、ゆきの体調はあまり良くない。本人が「たくさん歩いて疲れた」というので、明日は一日休むということになった。
ゆきの他は白龍しか知らないが、彼女は白龍の力を使うたびに命を削られているのだ。本当は、休んでも戻りはしない。
しかし、疲れているのは事実なので、ゆきはゆっくり休ませてもらうことにした。
●呼び方1 瞬の場合●
ゆっくりと休むはずだった・・・・しかし、都の一言によってゆっくりとはいかなくなってしまった。
「ゆき、昔一回だけ『都お姉ちゃん』って読んでくれたよね。・・・今言ってみてくれない?」
恥ずかしかったものの了承してしまったので
「ちょっと待ってね・・・・・・み・・み・・都・・・お姉ちゃん・・・・・」
というと、ゆきを除いて9人もいるはずの部屋の空気が止まった。
ちなみに、ゆきは顔を真っ赤にし、恥ずかしさのあまり涙目、そしてちょっとだけ顎を引いた上目遣い・・・・という状態で「都お姉ちゃん」と言った。
二拍くらいの間、ゆきは周囲の異変に気付いた。
「・・・都?」
「私の天使!!」
いつものことなので騒ぐことではなかったが、都はゆきを抱きしめた。都がゆきを抱きしめていると
「都、ゆきを放してやれ」
瞬が声をかけてきた。都は眉間に皺を寄せると思いついたようにゆきの耳に囁いた。囁かれたゆきは目をクリクリさせて都と瞬を交互に見た。都は「言って良いよ、ゆき」といったが、周りには何のことか分からない。痺れを切らした瞬が「ゆき」と呼びかけようとしたとき、ゆきの口が動いた。
「瞬おじさん!!」
都の笑い声が部屋に響いた。
「ちょ!都笑わないで!」
瞬はゆきに「瞬兄」と呼ばれるまで、フリーズして動かなかった。
〈2は龍馬の予定〉