小説

□呼び方1
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ゆきの体を休ませるため、一同は宿で休憩していた。今回は、珍しく高杉もそろっていた。

あまり広いとはいえない部屋の中に男9人と女1人・・・いや、男8人、女2人である。

最近は怨霊を封印するため歩くことが多かったせいなのか、ゆきの体調はあまり良くない。本人が「たくさん歩いて疲れた」というので、明日は一日休むということになった。

ゆきの他は白龍しか知らないが、彼女は白龍の力を使うたびに命を削られているのだ。本当は、休んでも戻りはしない。
しかし、疲れているのは事実なので、ゆきはゆっくり休ませてもらうことにした。


●呼び方1 瞬の場合●


ゆっくりと休むはずだった・・・・しかし、都の一言によってゆっくりとはいかなくなってしまった。

「ゆき、昔一回だけ『都お姉ちゃん』って読んでくれたよね。・・・今言ってみてくれない?」

恥ずかしかったものの了承してしまったので

「ちょっと待ってね・・・・・・み・・み・・都・・・お姉ちゃん・・・・・」

というと、ゆきを除いて9人もいるはずの部屋の空気が止まった。
ちなみに、ゆきは顔を真っ赤にし、恥ずかしさのあまり涙目、そしてちょっとだけ顎を引いた上目遣い・・・・という状態で「都お姉ちゃん」と言った。


二拍くらいの間、ゆきは周囲の異変に気付いた。

「・・・都?」
「私の天使!!」

いつものことなので騒ぐことではなかったが、都はゆきを抱きしめた。都がゆきを抱きしめていると

「都、ゆきを放してやれ」

瞬が声をかけてきた。都は眉間に皺を寄せると思いついたようにゆきの耳に囁いた。囁かれたゆきは目をクリクリさせて都と瞬を交互に見た。都は「言って良いよ、ゆき」といったが、周りには何のことか分からない。痺れを切らした瞬が「ゆき」と呼びかけようとしたとき、ゆきの口が動いた。

「瞬おじさん!!」

都の笑い声が部屋に響いた。

「ちょ!都笑わないで!」



瞬はゆきに「瞬兄」と呼ばれるまで、フリーズして動かなかった。

〈2は龍馬の予定〉

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