nitty-gritty

□部下
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「何事ですか?」
「局長!秋本さん!」
現場についてから先に到着していた隊士に佐々木が問うた。場所は見るからに銀行。ガラスの自動ドアの向こうには室内が見える。
「銀行強盗が人質をとって立てこもっているんです。」
「厄介ですね。」
佐々木は私の言葉に頷いた。

「とは言ってましたけど秋本さん。そうとは思ってないでしょう?」
「……。」
「図星ですか…。」
私はドアの前に立ち、拳銃のスライドを引いた。
「総督の出る幕なんてありませんよ。」
「無理しないでくださいね。」
佐々木の言葉を背に、自動ドアのセンサーを押すが、全く反応しない。
「おっかしいな〜。」

その時、中から声がした。どうやら、犯人の一人が怒鳴ったらしい。
「開くわけねーだろ!」
「そうなんですよぉ。開けてもらえます〜?」
「開けたら立てこもりにならねぇだろ!」
「しょーがないなぁ…。」

拳銃をホルスターに戻すと、右の拳を固めた。
「ふんっ!!」
勢いよく振りかぶれば、ガラスは木っ端微塵に砕け散る。
「あーあ。派手にやりますねぇ。」
パトカーに寄りかかりながら、佐々木はため息をつく。

「はーい、こんにちはー。」
「お前っ!!人質がいるって分かってんのか!?」
「分かってますよ?一応、警察という立場上ですね、人質を安全に帰さにゃならんのでね。」
「それなら尚更だ!一歩でも動いてみろ!人質の命がどうなるか…。」
「分かってますって…。」
私は低く囁いた。男は息を飲んだ。一瞬で目の前に来た女に驚いたか。
「なめてんのか!てめぇ!!」
右にいた男が機関銃を構えた。構わず銃口を掴み、力任せにねじ曲げる。
「おとなしく縄につけ。殺されたくねぇのならな。」
主犯の男はひきつった笑みを浮かべて言った。
「てめぇ…何者だ?ただの警察じゃねぇな。」
「何回も言わせるな。ただの警察…見廻組副長補佐だよ。」
「くくくっ…おもしれぇなぁ!」
殺気を感じた。主犯以外の男らが全員機関銃を人質に向けていた。私は無意識に歯軋りしていた。奴らは卑劣極まりない。
「動くなよ。」
肩を掴まれた。簡単には動けない。どう手を打つべきか。男と目を合わせ、睨みあった。
「撃て。」
パァンパァンと音がして、銃声が響いた。私は冷めきった顔をした。
「はーい、」
「残念でした。」
「ゲームオーバーです。」
「そうですね。」
男はニヤリと笑った。私もニヤリと笑った。
「お前の負けだ。」

機関銃が四丁、次々と落ちていく。男の両側にいた仲間らは頭から血を流して倒れていった。
私の右手にある拳銃から放たれた弾丸は、男の左側にいた仲間らを撃っていた。相手を見なくたって正確に撃てる。
「ったく…秋本さん。説得してくださいって言ったじゃないですか。」
背後から佐々木の声がした。主犯の右側にいた仲間らを撃ったのは佐々木だった。
「説得は得意じゃないんです。」
冷めきった顔のまま、私は男に向かって言った。
「これで、観念したか?」
「…何のマネだ。」
「殺したら逮捕にならねぇだろ。」
仲間らはただ眠っているだけだった。
「一人じゃ何も出来ねぇくせに。」
男は笑った。そして、肩を掴んでいた手を離すとポンポンと叩かれた。
身を屈めていた人質たちが顔をあげる。振り向けば佐々木が男に手錠を掛けていた。仲間らも隊士に引きずられて銀行を出ていった。

人質を全員解放した後、佐々木と銀行を出た。
「何とも口下手でした。上手く説得できないものですね。」
「まぁ…今回は怪我人もいませんでしたし、いいですよ。」
陽は傾きかけて、一日の終わりと共に夜の始まりを告げていた。夕焼けに向かって佐々木と歩く。
「秋本さん。今気づきましたけど、あなたまだ副長補佐じゃありませんよね?」
「ああ…あれは気分です。」
私が副長補佐になるのはもう少し先の話。

「じゃあ、私はこの辺で。」
「お気をつけて。」
総督と別れ、私は目的地へ向かう。

私は秋本楓。
仕事はご存じの通り。



真夜中。古ぼけたビルが面する大通りに一台の車が停まる。運転席のドアから一人の男が姿を現した。「チェケラ」と書かれた褌にグラサン、ちょんまげっぽく結った髪に金属製のネックレス…まあ、とにかく派手で不良っぽい男である。
そいつはきょろきょろと辺りを警戒してから、その古ぼけたビルに向かった。

■■■

無理矢理繋げちゃった感じですね。
もうちょっとシリアスにするつもりだったんですがなかなか上手くいきませんね。


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