nitty-gritty

□総督
1ページ/1ページ


「あ。」

どうも、サブちゃんです。今日の私は珍しく単独行動なのですが、今、かなり危ない人物に見つかってしまいまして…。
時間は13時を過ぎたところでしょうか。お気に入りの、角のうどん屋でいつものようにカレーうどんをカウンター席で食べていたのですが、顔を上げてしまったのが運のつきでした。死神がじっと、あの紅い眼でこちらを睨んでいるんですね。恐ろしいったらありゃしないのですが、この店は残念なことに全面硝子張りのために結局はバレるんです。

「なんで1人でカレーうどんなんて食べてるんですか。」
不機嫌そうな顔で私の隣に座った少女こそ、私の直属の部下である秋本楓さん。お仕事はご存じの通りです。
「奢ってくださいよ総督。」
「お昼まだなんですか、仕方ないですねぇ。」
そう言った瞬間に彼女の目の前に煮込みうどんが置かれました。どうやら人の言葉を待たずに注文したようです。
「しかし、お金なんていくらでも持ってるでしょう?クレジットカードもありますし。」
「お昼ご飯はカードじゃ払いたくないんです。でも、たいてい知り合いがいたら奢らせます。」
ズーとうどんを啜る、何処にでもいそうな少女から、あり得なさそうな言葉を聞きました。まあ、その相手が私や新井さんだけならいいでしょう。



「お仕事は?」
「夜に近づいたほうが有利な相手だってことが分かってるので、今はフリーです。」
「そうですか。」
店から出て、私達はただ宛もなくフラフラと歩くことにしました。そういえば私と秋本さん、仕事上では総督と部下という関係ではあるものの、仕事以外では会うことも、ましてや話すこともないことに気がつきました。だから、お互いのプライベートはあまり知らないんですね。

「普段、フリーの時は何をしてるんですか?」
「射的屋とか喫茶店にいますね。」
射的屋とは、この大通りを1歩入った路地裏にあるあの店でしょうか。潰れる寸前だったのに、何故か潰れず、店のリフォームまでしたという話と共に、たまにくる黒装束の女が毎度商品を全て打ち落とすという伝説を耳にはしていましたが…。さすがですねぇ。まあ、黒装束を着てる人なんてこの娘以外にあり得ませんね。
「1回いくらなんです?」
「弾が7つの200円です。でも、だいたいアンコールしちゃうんで、10回ぐらいやりますね。」
「そこで2000円使うんですか。商品だって、ガラクタばかりでしょう?お金だって馬鹿にならないですよ。」
「大丈夫です。ガラクタは売ってますし、クレジットカードあるんで。」
…私の思考は一瞬停止しました。何が大丈夫です?射的にクレジットカード?昼飯に使わない人間が何故、射的屋でクレジットカードを使う?
「…それはいいですけど…そこで使えるんですか?たまにSuicaでさえ使えないところあるじゃないですか。」
「初来店の時から大丈夫でした。」
「そうですか…。」
射的屋の話をし始めた頃から私達はそこへ向かっていました。そして、今、着いたところです。
「…秋本さん。」
「はい。」
私達は店の前で顔を見合わせました。
「勝負しませんか。」



店に入れば、店主と思わしきお婆さんが笑顔で出迎えてくれました。
「あら〜、お嬢ちゃん。久しぶりねぇ。彼氏…「上司です。」
分かってるわよ〜、と笑いながら彼女はアルミ皿と空気銃を私達の前にある台に置きました。皿の中には確かにコルクの弾が7つ入っています。
「上司さんと勝負するつもり?」
「はい。」
「頑張って〜!!」
ニコニコ笑いながら彼女は商品を7個から13個に並び替えました。
「では、構えて〜。」
私は戸惑いながらも、しかし隣の秋本さんは慣れた手つきで弾を詰めます。
「スタート!」
彼女がそう言った瞬間、秋本さんの銃から放たれた弾が商品を落としました。さすが、とも言うべきか。私はこの勝負には勝てないと思いました。

しかし、粘ってはみるものです。弾は残り1つ。チラリと隣をみると、秋本さんはそれを詰めているところでした。
構えて撃ち放つ。しかし、私が引き金を引く前に最後の商品が落ちました。やはり、ベテランには勝てませんね。
「はい、お嬢ちゃんの勝ち〜!」
会計を済ますと、私達はお婆さんの笑顔に見送られて店を後にしました。



暫くまた大通りを歩いていると、私のケータイが着信を告げました。
「事件、みたいですね。…そう言えば、あの方のお名前は?」
「フミ子婆さんです。」
彼女のあっさりとした返事にそうですか、と答えると急ぐでもなく私達は現場に足を向けました。

■■■

この話は、何となく浮かんだものですが、佐々木とヒロインって、以外としゃべってないしなぁなんて思って書きました。「総督と部下」で1つみたいな感じなんですが、こっちはいくらか緩いかなと。遊びまくってますし。部下の方も出来上がり次第アップします。memoにて詳しい後書きもするかもです。


次の章へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ