新章 螢の光
□死んだ理由
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外から、馬の蹄が地面を打つ音がする。
きっと、乗馬が好きなコユキがクウラを誘って乗っているのだろう。
辟易としながらも、乗馬に付き合う親友の息子を想像して、自然と笑みが零れた。
それを見て不審に思ったのか、目の前に座る親友が口を開く。
「どうした?」
「うーん?なんでもないよ」
へらりと笑って誤魔化す。
親友は納得のいかない表情をしていたが、見なかったふりをして、話題を変えた。
「それで?今日は何の用で来たの?」
質問をしてから、テーブルに置かれていた紅茶を口に含む。
人払いは済ませてあるので、どんな内容になっても大丈夫だ。
親友も紅茶を一口飲んでから、口を開いた。
「ここに来る途中、クウラが暴漢に襲われた」
以外な事を聞き、目を見張らせる。
親友はさらに言葉を続けた。
「まあ、すぐさまボコったから大事にはならなかったけど……壁はぶっ壊しちゃった。直しといて」
「うん、十分大事だったね」
乱闘騒ぎだと、家臣達が騒いでいたが、原因はこいつだったのか。
「(相変わらず、家族の事になると喧嘩っ早いんだから)」
胸の内で思うが、口には出さない。
神ならぬ幽霊に祟りなし。
「用件はそれだけ?」
他にはないのかと軽い気持ちで聞いたのだが、親友はカップをテーブルに置き、深刻な表情をして口を開いた。
「なあ、ソウスイ」
「なんだい?」
「俺は……、どうして死んだんだろうな」
死んだ本人がそれを言ったらダメだと思うんだ。
「うん、ごめん。わかんない」
end