新章 螢の光

□緊急朝礼U
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「寒い……」

「寒いなぁー」

 寒風吹き荒れる朝礼には、クウラとレオンもしっかり参加していた。
 サクラは同級生の女の子たちと朝礼台近くで参加している。
 お目当ては、お立ち台に立つシンラだ。
 シンラはど真面目かつ厳しい授業(国語担当)が売りの教師で、女子たちに人気なのである。
 何がきっかけで、どうして人気になったのかは、クウラたち家族にも不明。
 朝礼台の周りは、女子ばかりなり。

「元気だなぁ、女の子」

 寒いのに。

 ぼんやりとしながら、レオンが呟く。
 朝礼ではなくコンサートだったら、間違いなく黄色い声援が送られそうな空気だ。

「うぅーーッ!アラナーーッ!」

「おのれシンラああああッ!」

「俺の彼女返せーーッ!」

 黄色い声援ではなく、恨み節が飛ぶ。
 二人の周辺に居た上級生の男子達が、シンラにぶつけてるのだ。
 最後の彼女返せ発言は、最近ガキ大将ぶっている5年生のエンジュだ。
 噂では、シンラ人気の高まりからか、振られる男子が続出しているそうな。
 寒さとは正反対の彼らに、レオンは頬をひきつらせ、クウラは呆れた。

「熱いなぁー……」

「ったく、情けない奴ら」

「そういえば、クウラの父さん帰って来たんだろ?何か話した?」

「なにも」

「何も?」

 レオンは目を丸くする。

「初めてあったのに?聞きたいこととかいっぱいあるんじゃないの?」

「それがさあ、全くと言っていいほど浮かばないんだよね」

 腕を組み、困ったような表情をクウラは浮かべる。
 会話という会話も、昨日今日としていない。

「本当に何も話してないのか?」

「事情聴取が終わってから『手を洗って、ご飯食べなさい』って言われて、『はい』って返事したくらいかなあ」

 あとは、朝の挨拶と朝食中に「醤油を取って」と言われたから、取ってあげた。このくらいである。
 王子の家の事情に、レオンはただただ唖然とした。

「少ないね……」

「兄さんやシンラさんは話してたよ。あと、アスラ姉さんも。僕だけだよ、喋ってないの」

 大人達は、昔からの付き合いだから、普通に会話しているのだろう。
 が、クウラは父が亡くなった後に生まれたから、実父との距離感が掴めず、どう接すればいいのかわからないのだ。

「レオンはリオルさんとどんな話ししてるんだ?」

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