新章 螢の光

□会話
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 ◇  ◇  ◇


 初等部を卒業する少し前の出来事だ。
 夕焼けの光が、守皇の島を包み込む。
 海辺にある城から少し離れた森の中で、クウラは自分より一回りも二回りも大きな、黒髪黒瞳の男たちに囲まれていた。
 気分転換で城を抜け出し、森の中を探索していたら、こいつ等に絡まれたのだ。
 男たちからは酒の匂いがする。身なりから守皇の者ではなく、観光客か。
 観光客がなぜ森にいる。この道の先には墓地しかない。他にあるとすれば、道を戻った所にある狐の祠か。あとは、島の反対側にある空軍の空母と偵察機くらいだ。
 そんな事をつらつらと考えていると、男たちの一人が手を伸ばしてきた。
 刹那ーー。

「触るな」

 この場にはいない人の声が耳に届いた。
 声の聞こえた方に、視線を向ける。
 夕焼けの光を背に、衣を被さった一人の人間が、道に立っていた。


 ◇  ◇  ◇


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