新章 螢の光

□再会
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「ただいまー」

 墓地から帰って来たクウラは家族用の玄関から城の建物の一つ、軍や城の関係者の棟に入る。王族の居住区はこの建物の反対側にある建物で、二階の渡り廊下を使って移動するのだ。
 外履きから上履きに履き替え、廊下に出ると待ち構えていたかのように、アスラが眼前に現れた。

「クウラどこ行ってたの!?」

 目を三角の形にし、眉をつり上げて言う。
 びくりと肩を上げ、クウラは一歩足を引いた。

「うっわ!びっくりしたー。何、急に」

「大変なの!早く住居棟来て!母様が倒れて、父様が帰って来た!」

「はあ?」


 ◆  ◆  ◆


「あの世で派手な親子喧嘩したら、俺だけ追放されちゃってさ。行く場所なくて戻って来ちゃった」

 アハハと笑って、ケイラは説明する。
 住居棟にある、国王の執務室に集まった彼の弟シンラとカイラは顔を見合わせた。

「だからさあ、この縄いい加減解いてくんない?」

 家族から、椅子と自身を縛り付ける縄に視線を落とす。
 ぐるぐる巻きにされ、半ば蓑虫状態だ。
 シンラは兄に視線を戻し、口を開いた。

「本人だと確認出来るまではダメだ」

「だから、さっきから本人だって何回も言ってんじゃん!確認で黒歴史暴露してんじゃん!」

 何が悲しくて、初恋の相手やら、嫁に惚れた瞬間やら、惚れ直した瞬間やら、男とキスした瞬間やら、ヨシアキと酒飲み比べて負けた回数やら、シンラにあげた誕生日プレゼントやらを長男の前で言わねばならぬのか。
 その長男は、部屋の隅で腹抱えて笑ってるし。
 苦虫を数十匹ほど噛み潰した表情をして、ケイラは舌打ちをする。
 それに構わず、シンラは話を続けた。

「次、俺と腕相撲やって骨を折られたのは何歳の時ですか?」

「まだやるの!?お前、俺に恨みでもあんのか!?」

「恨み妬みはないが、腹立たしいこと山の如く」

「あるじゃねーか!」

 もうやだ、この弟。
 久しぶりに帰って来た途端この仕打ち。
 因みに、骨を折られたのは22歳の頃だ。新年会の酒の勢いで、お遊び半分でやったらボッキリいった。指が。あれは痛かった。
 記憶の底に封じていた昔の黒い記憶を掘り起こされ、気分は急降下である。
 憂鬱な事情聴取が終わったのは、末息子を迎えに行ったアスラが戻って来てからだった。

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