いろいろ

□アナタ色
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『ルキさん、どうしたんですか…!?その、ふ、服は…?』

一人での入浴中に身体を隠す物など、都合良く持ち合わせているはずも無く。

バッとルキさんに背中を向けた。

未だわたわたと慌てふためく私を見るも、ルキさんはいつもの調子を崩さない。

「入浴するのに衣服を着たまま浴室へ入れと言うのか?とんだ低脳家畜だな」

入浴するのに服が要らないことは私でも分かる。

そうではなくて、私が聞きたいのはどうして私の入浴中にルキさんが入ってくるのかということだ。

『そ、そうではなくてですね…』

「では何だ。俺の目を見て言ってみるといい」

ガチャリと浴室のドアを閉める音がする。

『…あの…』

「俺の目を見ろ、と言ったはずだが?何度言わせれば分かる」

ルキさんに背中を向けたまま話そうとするも失敗に終わった。

「主人に背を向けたまま話そうとは…失礼極まりないな。躾をし直す必要がありそうだ」

『ご、ごめんなさい…』

確かに背を向けたまま人に話すのは失礼だったなと後悔する。

私は覚悟を決め、ゆっくりとルキさんの方へと振り返った。

腕では申し訳程度しか隠せるものも隠せないけれど…やっぱり恥ずかしい。

『あの…どうして私の入浴中に入って来られたんですか…?』

「決まっているだろう、血が欲しくなったからだ。衣服は無い方が牙を這わせやすい」

"牙を這わせる"という言い回しにドキドキしてしまう自分が居て恥ずかしくなる。

思わず俯くと、ルキさんがゆっくりと近付いてきた。

『る、ルキさん?』

少し後ずさると、腰に鏡の冷たい感触がして、私は思わずビクリと身体を震わせた。

『ひゃっ』

そのままルキさんと鏡の間に追いやられ、顔の横…つまり鏡に手を付かれ、完全に閉じ込められてしまった。

そしてルキさんの顔が近付いてきたかと思えば、耳元でルキさんの声がする。

「何を期待している…?」

低い声でそう囁かれては、平然を保ってなんかいられない。

『き…期待してなんか…いません…!』

「ほう?」

突然腰を掴まれたかと思えば、そのままくるりと身体を反転させられる。

つまり私は今、鏡と向き合っている状態だ。

私の後ろに立っているルキさんと、鏡越しに目が合う。

『!!…やぁっ…』

「嫌じゃない、ちゃんと見ろ。主人の命令にも従えないのか?」

思わず目を逸らすと、ルキさんから注意を受けてしまった。

ゆっくりと目線を鏡に戻す。

『…』

恥ずかしいにも程がある…!

一緒に浴室に居るという状況だけで恥ずかしいのに、わざわざ、こんな。
 
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