いろいろ
□花弁にキス
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ぺらり、と誰かが本を捲る音が図書館内に響く。
今は放課後。
図書委員の私は図書カードを整理したり、本を本棚に戻したりと自分の仕事をしている。
もしこの仕事が早く終わって時間があれば、読みたい本があるのだ。
テキパキと仕事をこなしていると、図書室の扉を開く音が聞こえた。
『こんにちは…って、スバルさん?』
入り口の所でこちらを見てじっと立っているスバルさん。
本を読みに来たなら中へ入ってくるだろうし、あそこで留まっているということは…何か私に用があって来たのだろうか。
私は作業する手を止めて本棚を離れ、スバルさんの元へと向かう。
『どうしたんですか…?』
図書室の入り口辺りなので、あまり声は響かないと思うけれど…念の為小声で話し掛ける。
「迎えのリムジン来てるから…別にお前を呼びに来た訳じゃねぇけど。帰らねぇのかよ」
『…!わざわざ迎えに来てくださったんですか?』
目を逸らしながら言葉を紡ぐスバルさんに、私は嬉しくて思わず笑顔になる。
「ち、ちげぇよ迎えに来たとかそんなんじゃねぇ!」
顔を赤くしながら声を上げるスバルさんに私はシーッと唇に人差し指を当てる。
『あの…私今日は図書委員の仕事があるので…すみませんがスバルさんはお先に帰っていてください』
苦笑しながらそう答えると、スバルさんはムッとしたような、納得のいっていないような表情で私を見下ろしていた。
「…じゃあいい」
そう小さく言い捨てたスバルさんにじんわりと罪悪感がこみ上げてくる。
『(せっかく来てくれたのになんだか申し訳ない…もっと言い方を変えるべきだったのかな…)』
内心で悶々としていると、スバルさんはツカツカと私の隣を通り抜ける。
つまり、図書室内に入って来たのだ。
『スバルさん…?』
そしてスバルさんは図書室内でも一番立派なソファにドカッと腰掛けた。
「ここで待つ」
ソファで足を組み始めたスバルさん。
わぁ…スバルさんの足、スラッとしてて長…ってそうじゃなくて…!
『あの、待つってその…』
「うるせぇ。俺が今帰ったらわざわざここまで足を運んだのが無駄になるから待つだけだ」
『(…やっぱり、迎えに来てくれたんだ)』
ムスッと膨れたような顔をしたスバルさんがとても可愛らしく感じて、私は思わず小さく笑った。