いろいろ

□チョコレート不足
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「キスしてほしかったんでしょ?」

『ち、違うよ何でそうなるの?』

「じゃあ、ただの欲求不満?」

『それも違う!』

意地になってしばらく言い合いを続けてみたけど、おそ松くんは一歩も引いてくれなかった。

そうしている間に、おそ松くんを押し返す私の手首を掴まれる。

彼の一本の腕で私の腕二本を押さえつけられ、彼の力の強さを感じた。

「もっと素直になればいいのに」

彼は余ったもう一方の手を私の顎に添える。

そして軽く顎を持ち上げられ…

『!』

目が合った。

「あはは、たまごちゃん顔真っ赤。なに照れてんの〜?」

私は恥ずかしくて、おそ松くんから目を逸らす。

こう正面から迫られては、少し恥ずかしい。

…実を言うと、彼と付き合ってからしばらく経つものの、キスはまだなのだ。

いつも彼にからかわれて終わり。

からかわれて…。

『あ…』

そこで私はピンとくる。

「ん?どったの?」

覗き込んでくるおそ松くんに、ちらりと目をやる。

『もしかしておそ松くん…ずっとキス、したかっの?』

私のその言葉を聞いた瞬間、先ほどとは打って変わっておそ松くんが硬直した。

お、図星かな?

少し自意識過剰かなとも思ったんだけど…

「…!…、」

『…あれ、おそ松くん。顔真っ赤だよ。違ったかな?』

思わず頬が緩む。

いつも主導権を彼に握られてばかりだから、なんかすごい新鮮だな。

しばらく一人でオロオロした後、おそ松くんは何かを決心したかのように、その場に座り直した。

そしてまっすぐ私を見据えて

「うん。俺、たまごちゃんとキスしたい」

そう言い放った。

『…!』

今度は私が固まる番。

なんかこう、ストレートに言われるとびっくりするというか…。

「たまごちゃん…」

『あ、あぅ』

再びガシっと両肩を掴まれ、ゆっくりと顔を近付けられる。

情けない声が私の口から溢れるけど、そこに構っていられない。

「好きだよ」

愛の言葉と共に、唇に柔らかい感触を感じた。



チョコレート不足
(やっべー、キス ハマリそ…)
(おそ松くんの方が欲求不満じゃん!)



***あとがき

純情なおそ松がほしかったんです。
 
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