いろいろ

□チョコレート不足
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雑誌を閉じたおそ松くんは、じりじりと私の方へと近寄ってくる。

「…」

『…』

うっわー、なんかすっごい嫌な予感がする。

このニヤニヤした顔は、悪巧みをしている時の顔だ。

なんとか逃げなければ。

『あ、そ…そうだ私、お手洗い借り…』

「なぁたまごちゃん」

『は、はい…』

緊張のせいか、少し声が上擦ってしまう。

うぅ、逃げそびれた。

まぁおそ松くんがそんなに簡単に逃してくれるはずもないんだけど…

「チョコにハマる大人って、キス不足なんだって」

『え、なに、キス不足…?』

「そ!たまごちゃんチョコ好きなんでしょ?キス不足なんじゃないの?」

未だニヤニヤしながら迫ってくるおそ松くん。

身を乗り出してくるおそ松くんの肩を私は精一杯押し返す。

『ま、また適当なこと言って…!そんなの聞いたことないよ?』

「適当なんかじゃないって!ほらここ見てよ」

そう言われ見せられたのは、先ほどおそ松くんが読んでいた雑誌。

彼の指先に視線を這わせれば、そこにはしっかりと、先ほどおそ松くんが言っていたことが書いてあった。

"チョコにハマる大人はキス不足の可能性あり"

"口内でチョコがとろける快感はキスの4倍"

"その為キス不足、欲求不満の大人はチョコにハマりやすい"

嘘じゃなかったんだ…

いや、おそ松くんのことだから、また適当に何か言ってるのかと思ったんだよね。

ちょっと申し訳ないな。

でもそれとこれとは話が別だ。

『た…確かに書いてあるけど私、ハマってるってほどじゃ…』

「照れ隠しはいいって」

このまま彼のペースに飲まれては、彼の思うツボだ。

『それに"可能性あり"なだけで、別に全員が欲求不満なわけじゃないでしょ?』

「いっや〜!たまごちゃんは欲求不満でしょ!」

どこからその自信湧いてくるの!?

「見てたら分かるよ〜?さっきも、"キスしてほしい〜"って顔してたもん」

してないからね?

反論するも、おそ松くんは諦めてくれなさそうだ。
 
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