いろいろ

□幼馴染の壁を今
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どこかで淡い期待を寄せていたかもしれない。

大揮くんは優しいから。

大揮くんはいつも傍にいてくれたから。

『…っうぅ…』

出ていってと言ったのは私なのに、何で涙が出るのかな。

もう、ほんと最悪だ。

『…だい、き、く…ふぇっ…』

無意識に大揮くんの名前を呟いてしまう自分に腹が立つ。

腹は立つけど、止まらないんだ。

『大揮くぅん…うう…っ』

涙混じりに呟く。

「なんだよ?」

『………?』

突如聞こえた他人の声に、私は声のした方…脱衣場(ドア越し)に目を向ける。

すると



ガラッ



服を脱いだ状態の大揮くんが、入ってきた。

『だあぁぁぁい!!?』

え!?

大揮くん!?

大揮くんが入ってきた!?

ていうかこのノリニ回め!

私はパニックになり、湯船の中で涙を拭く。

あ、痛い。

お湯が目に入った。

『か、帰ったんじゃ、なかった…の…』

親のいない家のお風呂場で男女が生まれたままの姿であることに、こいつは何とも感じないのか。

何だか私はいろいろイケナイ気がして、鼻から下までを湯船の中に沈めて視線を逸らす。

「はあ?帰るとか言ってねぇだろ」

『確かに言ってないけど…で、出ていってって言ったじゃん』

感心なところでどもってしまう自分のチキン度を憎む。

それより自分の意地っ張りなところが腹立たしいけど。

「…はぁ」

すると、大揮くんはまたため息をついて



ジャポンッ



『っ!?』

湯船の中に入ってきた。

『ちょ、あぁぁあのっ大揮くん!?お湯が溢れるじゃん…!』

いろいろ突っ込みどころがありすぎて、とりあえず溢れて流れていくお湯の心配しかできない。

「あのなぁ、お前は馬鹿すぎんだよ」

『…はい?』

え、いや、青峰サンに言われたくないッスよ。

「…あぁ?」

『ご、ごめんなさいごめんなさい。(あれ、口に出したっけ?)で、なんで…』

口を開いた私を、大揮くんは強く優しく抱き締めた。

「あんな泣きそうな顔されて、ほっとけるわけねーだろ」

そう言ってニヤリと笑う大揮くんに、顔が熱くなった。



幼なじみの壁を今
(さぁて、今日はたっぷり付き合えよな)
(え、ちょ、あの…っいやぁぁぁぁ)



***
あとがき

…風邪引くわ。
 
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