いろいろ

□ベタな愛し方
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『ふぅ…』

口を開くと同時に漏れた白い息。

マフラーや手袋、耳あてをしている生徒が目に映る。

それもそうだ。

もう冬なのだから。

それで、今は放課後。

今日は高尾くんが部活オフということで、一緒に帰る約束をしていた。

なので、私は校門前で立っている。

「たまごちゃん、お待たせ!」

『あ、高尾くん』

高尾くんがこっちに走って来る。

「ごめんな、寒い中外で待たせて」

『大丈夫だよ、高尾くんと帰れるんだし』

「たまごちゃん…!」

キラキラと瞳を輝かせる高尾くん。

「それはそうとして。待ってる間、寒かったっしょ?」

『…ちょっとだけ』

うそだ。

手はキンキンに冷えていて、本当は今すぐこたつに潜り込みたいくらいだ。

そんな私の様子を察したのか、高尾くんは薄く笑う。

「…手、あっためてあげる」

そう言って手を差し出してくる高尾くん。

私たちは自然と立ち止まる。

赤い頬、赤い耳。

二人を取り巻くのは白い息。

『あ…お、お願いしますっ…』

そう言って手を伸ばせば、高尾くんは指を絡めてくる。

「…」

『…』

心地の良い沈黙が、しばらく続いた。
 
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