いろいろ

□告白予行練習
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夕暮れの時間。

二つの黒い影が並んで歩いている。

手にはスーパーの袋。

つまり買い出しの帰りなのだ。

『ねぇカノ』

歩調はそのままで、自分の影を見ながらたまごはカノを呼ぶ。

「ん〜?」

同じくカノも何をするわけでもなく、いつもどおりの風景を眺めながら返す。

『私ね、好きな人がいるんだ』

「…え?」

カノは足を止める。

見開いた目は、しっかりとたまごを見ていた。

「…」

『ちょっ…カノ?』

しばらく固まっていたカノだったが、たまごが自分の肩に触れたので我に返った。

そして、みるみるうちにカノの口角が上がっていく。

『やっぱ何でも「あっはははははは!!」』

笑い出したカノは止まらない。

「たまごが恋!?あのたまごが!好きな人ぉ!?ぶわっはははは!」

『なっ…!別にそんなに笑わなくても…!』

たまごは顔を真っ赤にして言い返す。

「だって、だってさぁ!あっははは…ひーっ、お腹痛っ…くっくっくっくっくっ…あははは、っげほ、うひゃひゃひゃひゃ」

うるさいな

たまごは未だ腹を抱えているカノをじと目で見る。

でもすぐにたまごはそれをやめ、再び歩き出した。

それに続いてカノも歩き出す。

『嘘に決まってるじゃん!』

嘘っていうのが嘘なんだけど、とたまごは心の中で付け足す。

「なぁんだ。本気にしちゃったよ」

たまごの言葉にカノも軽く返す。

そしてカノはたまごの背を叩きながら言う。

「まぁ悩みがあるならいつでも言いなよ。僕が恋のキューピッドになってあげるから…

今自分がどんだけキモいかわかってないでしょ

たまごは思い切り目を逸らしながら言った。

「ひっどいなぁ。この僕が手伝ってあげるんだから百人力でしょ?」

『むしろマイナスとしか思えないよ』

「ほんとひどいなぁ〜たまごは。もっと可愛気あればいいのに」

『ほっとけバカ』

いつも通りの軽い言い合いをしながら、私たちはアジトへ帰った。
 
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