テニプリ

□三度目のキス
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今日も部活が終わった。

『窓も閉めた、電気も消した、…よしっ』

今は一人、後片付けや戸締まりのチェックをしているところだ。

特に問題は無いし、この部屋の扉の鍵さえ閉めて職員室に返却すれば大丈夫そうだ。

『(思ったより遅くなっちゃったし、早く帰ろう)』

そう思いながら扉の方に身体を向け、部室の鍵取り出す。

そして扉に鍵を差し込むと、ふと手元に影が差した。

「たまごちゃん」

『っ!?』

真後ろから声が掛かり、驚き顔を上げる。

するとそこには…

『ふ、不二先輩!』

「やぁ、お疲れ様」

にこにこといつもの笑みを浮かべる不二先輩が居た。

『け、気配も足音もしなかったんですが…』

「フフ」

いつの間にこんなにピッタリ後ろにくっついていたんだろう、全く気付かなかった…!

そこに突っ込むも、不二先輩は笑顔を浮かべるだけだった。

『あれ、先に帰ったんじゃなかったんですか…?』

「クス…まさか。こんな暗い道をたまごちゃん一人で帰すわけないじゃないか」

『そんな、疲れてるでしょうに…すみません』

「うぅん。ボクがやりたくてやってることだから気にしないで」

不二先輩とは比較的近い所に家があり、時間が合う時はこうして送ってもらっていた。

不二先輩は本当に優しい人だ。

けれど…最近、この不二先輩に対して少し不安になることがある。

『あの、不二先輩』

「なんだい?」

『その…近いんですが…』

控えめにそう言う私の隣で、不二先輩は顔色を変えずに立っていた。

それどころか身体をこちらに寄せて来る。

そう…なんだか不自然に距離が近いのだ。

「鍵閉めるのに手間取ってるみたいだから手伝おうと思ってね」

『え?あ、あのっ…』

戸惑う私の後ろから腕を回してくる不二先輩。

なんだかこれって…抱き締められているみたいだ。

私は自然と自分の顔に熱が集まるのを感じた。

『(うぅ、近い近いっ…)』

不二先輩は私の手の上に手を重ねる。

不二先輩の手はとっても綺麗で…でも、大きくてマメもあって。

とても努力家な人の手。

『…』

周りの人からは簡単に"天才"なんて呼ばれているけれど、本当はとても努力家な不二先輩。

私はそんな不二先輩のことが、好きだった。
 
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