テニプリ

□真冬の温もり
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「…たまご先輩」

『なんや日吉くん』

俺の真正面に居るたまご先輩は、俺が口を開けばすぐに返事をする。

薄暗い部屋の中では、やはり相手の表情が見えにくい。

風の勢いが凄いせいで、窓が少し音を立てている。

暖房をつけているとはいえ、寒い。

「疑問点があるんですが」

『よろしい、述べてみよ』

なぜか偉そうな口ぶりのたまご先輩だがもう何も突っ込まない。

なぜ俺のベッドにいるんですか

そんな遠い目せんでも

当たり前だ、遠い目にもなる。

もう夜も遅いんだ、早く寝かせてほしい。

「別の部屋へ通しましたよね?」

『おん、通された』

「その通された部屋のベッドで寝るように言いましたよね?」

『おん、言われた』

「俺、その後間入れず扉を閉めましたよね?」

『おん、閉じ込められたみたいやった』

じゃあなぜここにいるんですか?

ちなみに俺の部屋は鍵閉めたはずなんだが。

あと"閉じ込められたみたい"じゃなくて"閉じ込めた"んだ。

いや、なんか、いいかなーって!

型破りにも程があるでしょう

はぁー、と大きく溜め息をついてもたまご先輩は幸せそうな笑顔を見せるだけ。

どうしたものか。

『日吉くんが寝られへんかと思ってな』

おかげさまで

横になりながらも頭に手を付き、この変態をどうやって部屋から追い出そうかと考える。

するとふいに、たまご先輩が軽く笑い始めた。

ついにおかしくなったか?

「いや、おかしいのは元々…か…」

失礼やな

「で、どうしたんですか?一人で笑って」

俺が問うと、たまご先輩は苦笑いを浮かべる。

『日吉くん、どないして私のこと追い出そうか考えてるんやろうな〜って思って』

わかってて動かないんですね

うん、お馬鹿やな〜って!

突き落としますよ?

まぁベッドから落ちたくらいでは、痛くも痒くもないだろうけどな。

また溜め息をつくと、眠気が襲って来た。

『日吉くん、眠いん?』

「…少し」

目を閉じながら答えると、たまご先輩の指が俺の髪に触れる感触がした。

この感触は、嫌いじゃない…ような気がする。

いつもならその手を払うが、今はもう眠い。

『よしよし』

たまご先輩の胸元に、頭を寄せられる。

色気も何も感じないが、気分は悪くない。

『おやすみ、日吉くん』

「おやす…なさ…ぃ…」

薄れゆく意識の中で、俺はたまご先輩に返事をした。
 
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