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□真冬の温もり
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今日から明日にかけて、珍しく両親が家に居ない。

祖父母も居ない。

親戚の家に泊まる理由があるのだとか。

更に明日は部活もなし。

誰にも気を遣わずに明日一日を過ごせるとなると、心なしか自宅へと帰る足取りが軽い。

部活で疲れた身体が、いつもより少し軽く感じた。

そのせいか、気付けば家の前に着いていた。

玄関に手をかける。

今日は以前録画していた心霊番組でも見直そうか。

いややっぱり読sy『日吉くん』

「…」

幻聴か?

「…」

部活の先輩の声が、俺の真後ろから聞こえた…気がした。

まさか、な。

今日も遅くまで自主練して、帰宅するのがこの時間になったのだ。

部室には誰も居なかった。

帰り道は俺一人だった。

「気のせいだな」

自分に言い聞かせるようにぽつりと呟く。

『気のせいちゃうよ』

…寒い。

早く家に入ろう。

そう思い、玄関の扉にかけたままの手を動かす。

『日吉くガラララッ バタンッ

俺は沖縄武術並のスピードで家に入り玄関の扉と鍵を閉めた。

すると案の定、外から扉を叩く音が聞こえてくる。

『ちょっと日吉くん!そこにおるのはわかってるんやで!?なんで入れてくれへんの!日吉くん!寒いって!』

聞こえないふりが良い。

俺の休日を失うわけにはいかない…!

『日吉くん!ひよっ…へくしっ!』

くしゃみをする声を聞いて、俺はハッとする。

風邪を引かせてしまったのだろうか…?

外は寒い。

この冬一番の寒さだろう。

「…」

さすがに風邪を引かれては困る。

…少し暖まらせたら、後で適当に帰ってもらおう。

いや、帰らせよう。

俺は軽くため息をつき、扉の鍵を開けた。

『開けて〜!ひよ ガチャッ ゴンッ わぶっ!』

あ、ぶつけてしまった。

扉に縋りついていた先輩の額に、扉の角がクリティカルヒットしたようだ。

それと同時にドアを叩く音は鳴り止んだ。

扉の外を覗き見ると、そこに居たのは…

『こんばんは〜…日吉くん…ズルッ』

寒さのせいで顔を赤らめ、扉に額をぶつけた痛みのせいで半泣きになっているたまご先輩。

軽く鼻を啜っている。

『ちゃんと用事あって来たんやで。でもとりあえず中入れてぇな、外寒すぎやわぁ』

「…仕方ないですね」

少しの罪悪感が湧き、俺はたまご先輩を室内へ入ることを許した。

『やったー!お邪魔しまぁす』

するとさっきの半泣きはどこへやら、嬉しそうに靴を脱ぐたまご先輩の姿が目に映った。
 
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