テニプリ

□不器用な俺でも恋はする
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「これなんの嫌がらせ?見せしめ?」

『そんなんじゃないよ!私の想い!』

「迷惑なんだけど」

『こうでもしないといぶぶ、私のこと視界にも入れてくれないじゃん』

「入れなくていいでしょ。ほんと邪魔なんだよなぁ…」

『そんなことないよ、ちゃんと見ててほしい!』

口先の攻防戦を続けて、どれくらいの時間が経ったのだろうか。

こいつも、引く気はないようだ。

もちろん俺もだけど。

「変な誤解招くの嫌なんだよね。めんどくさい」

『え〜、私は願ったり叶ったりなんだけど』

「俺は願ってないし叶ってほしくもない」

『…』

突然黙ったこいつに俺は少し驚いて、背けていた視線をこいつに移す。

ほぼ反射だ。

下を向いていて、様子は分からなかった。

…なにか、まずいことを言ってしまったのか。

『…』

そんな俺の考えを遮断するように、こいつは俺の胸元に頭を預ける。

あ、頭を…預ける…?

「…!」

心臓が跳ねた。

なんだこれ。

変なの、気持ち悪い。

全身に鳥肌が立つ。

一瞬でもドキッとした、俺が気持ち悪い。

『いぶぶ…』

すり、と頭を擦り寄せてくるこいつに更に俺の心臓が音を立てた。

でも俺は余裕があるかのように見栄を張る。

「な、何されても何とも思わないし」

どもった、最悪。

『…』

ふいに顔を上げたこいつと目が合った。

自分からこんなことしてるくせに、真っ赤な顔をしていた。

変なやつ、ほんと意味分かんない。

『いぶぶ、いいにおい…もっと嗅いでいい?』

無理、退いて

わかった、こいつは変なやつじゃない。

変態だ。

『やだ、いぶぶのにおい嗅ぎたい』

「他の人来たら気まずいでしょ」

『他の人のことなんか気にしないでさ!ほら、ここにもっと気にするべき人がいるでしょ?』

じっと見つめてくるこいつ。

「い…意味分かんない」

俺はまた視線を逸らした。
 
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