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□不器用な俺でも恋はする
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『ねぇ、いぶぶ〜』

「何その変な呼び方。やめてくんない」

俺の前に立ち塞がるのは、同じクラスのゆでたまご。

テニス部マネージャーでもなければ、友達というわけでもない。

仲良くもない。

ただ同じクラスなだけ。

『え〜!いぶぶって名前、可愛いと思ったんだけどなぁ…』

じゃあやっぱり深ちゃんの方がいいのかな、なんてブツブツ呟き始める始末。

なんだこいつ。

「とりあえず退いてくんないかな…部活行きたいんだけど」

『え?深ちゃん、なんて?』

ボソボソと呟く俺の声が聞き取れなかったみたいで、屈託のない笑顔を向けてくる。

別にスルーしてくれていいのに。

「深ちゃんって言うな。そこ退いて」

状況説明が遅れた。

今は放課後の教室でこいつに壁ドンされている状態。

普通男女逆じゃないのか。

『やだよ!せっかくここまで追い詰めたんだから!』

「周りに見られたら変な誤解生むんだよな…めんどくさ…」

もちろん身長差があるので、俺がこいつを見下ろすような状態だけど。

『誰も来ないから大丈夫だよ、いぶぶ』

「そういう問題じゃない」

『いぶぶは照れ屋さんだね〜』

楽しそうに笑うこいつから目を逸らす。

なんか俺にはこいつが眩しく感じる。

「いつになったら離してくれんの。邪魔なんだよね」

少し語尾を強めて言ってみる。

『んん〜…いぶぶ、いいにおい〜』

果たして、俺の声はこいつに届いているのか。

まぁどっちでもいいけど。

「部活遅れたらどうしてくれんの」

『責任とってお嫁さんにいってあげるよ?』

「いらない。退いてくれたら済むでしょ」

『やだ〜!』

どうしても動かなさそうなこいつに、俺は次は何て悪態をつこうか考え始めた。
 
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