テニプリ
□アイリスがくれたのは
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キーンコーンカーンコーン
終業のチャイムが校内に鳴り響く。
今日はずっとアイリス(消しゴム)のことについて考えとったからか、一日が過ぎるのが速かった。
そしてまだアイリスの対処法について考えがまとまってへん私。
『うぅーん…』
「たまご?」
『謙也か…』
自席でうんうんと唸っとったら、謙也が声をかけてきた。
『今忙しいねん、シッシッ!』
「虫扱いすんなや!」
『…』
「…たまご?」
急に黙った私に違和感を抱いたのか、謙也は小首を傾げる。
「今日どないしたん?ずっと難しい顔しとるけど」
カタン、と前の席の椅子を引き、腰掛ける謙也。
「俺で良かったら話聞くで?」
そう言うて笑いかけてくれる謙也に、私は決心した。
ほんまのこと言おう。
ほんでちゃんと謝ろう。
『謙也…』
「ん?」
私を安心させるためか、優しく笑いかけてくれる謙也。
こんな優しい友達に、隠し事なんかしてどないすんねん。
『…』
私はスッと立ち上がり、
『ごめんなさい』
謙也に向かって腰からびしっと頭を下げた。
直角90℃、神前礼ってやつや。
「え、ちょったまご!?な、なんやねん、顔上げぇや!」
あたふたとしながら、周りのクラスメイト達の目線を気にする謙也。
顔を上げるように言われた私やけど、頑なに頭は上げへんかった。
「…どないしたん?」
観念したように軽くひと息つく謙也に、私は口を開く。
『これ…』
「アイリス!!?」
『せや…アイリスの、生首』
私はポケットに隠し持っとったアイリスの生首と、胴体をバラバラに取り出した。
そしてそれを謙也へと差し向ける。
「アイリス…!!うわぁあ、なんで…こないなことに…!」
私の手からアイリスの生首と胴体を優しく受け取る謙也。
"Oh,Iris!!"とか叫びながら頬擦りしとる。
『謙也に借りてすぐに壊してしもて…それで一日、どないしようかと思って悩んどって…』
「そうなんか…」
『せやから、ごめんなさい』
「…」
しばらく沈黙が続く。
他のクラスメイト達は空気を読んだようで、教室内に他人の気配はあらへんかった。
「たまご」
『はい』
「おおきにな」
『…えっ?』
思わず耳を疑った。
なんで、感謝の言葉を告げられたんやろう。
驚いた拍子に思わず顔を上げた瞬間、謙也と目が合う。
「正直に言うてくれて。このまま隠された方が嫌やったわ」
『謙也…』
「もしたまごが俺に隠したまま同じ種類のモン買うてきても、それはもうアイリスやないし。それに俺たぶんそれがアイリスやないって気付いとったと思うしな!」
『謙也…!』
「せやから、言うてくれておおきにな!たまご」
そう言うて笑いかけてくれる謙也に、私は感謝するしかあらへんかった。
『謙也ぁああ!!』
「うおっ!?ちょ、やめぇや!なんやねん!」
思わずガバッと抱き着くと、謙也は焦ったように暴れ出す。
『ほんまによかった!どないしようかと思っててん!おおきに!おおきに謙也!』
「なんやねん、消しゴムひとつで大げさやな!」
『私どつかれても蹴られてもえぇわって覚悟しとって、それでそれで…!』
「あぁもう分かったって!」
そう言うと同時に謙也は私の身体をベリッと引き剥がす。
「どつかれても蹴られてもって、あんまりそんなこと言いなや」
『せやかて…』
謙也は少し考えたような素振りをして、また言葉を紡ぐ。
「分かった。俺もさすがに全く怒ってへんわけやないから、一発どつかせてぇな」
ってことは、やっぱり怒っとったんやな!
そらそうやんな、怒らんわけあらへんもんな!
『おう!来い!ひと思いにどついて!さぁ!来ぉおおい!!』
私は固く目を閉じて歯を食いしばる。
すると
ガツンッ
『〜〜〜〜〜っ…!!!』
結構な勢いでどつかれた。
どつかれたっていうか、本物のゲンコツって感じや!
「ふ〜…」
自分の拳を擦りながら息をつく謙也。
私は思わず半泣きになりながら、謙也の表情を伺い見る。
「よっしゃ、もうスッキリした。これでアイリスのことはチャラや!」
『…え、えぇの…?』
「これ以上やったかて何もあらへんし、たまご泣きそうやしな!」
『誰が泣きそうや、こんなん全然痛ないって!』
「もう一発いっとくか?」
『遠慮しときますごめんなさい』
もうあのゲンコツだけは勘弁!!
なんて思っとったら
「謙也〜たまご〜、そろそろ部活やで〜」
まるでタイミングを図ったかのように、白石くんが教室の外から顔を出した。
謙也と私は顔を見合わせて笑い合い、教室を後にした。
アイリスがくれたのは
(よぉ我慢したなぁ、謙也)
(し、白石!見とったん?)
(一部始終な)
***あとがき
にこ様リクエスト作品。
謙也のギャグ夢ということで書かせて頂きました!
謙也って消しゴムのことでめっちゃキレそうなイメージが…!
ちなみに恐竜ちゃんの名前「アイリス」の由来は、花言葉からです。
アイリスというお花の花言葉は「友情」なのですが、タイトルに関連付けてみました!
リクエストありがとうございました★
とこたん。