テニプリ

□アイリスがくれたのは
2ページ/3ページ




やばい。

やばいやばいやばい。

どんなけやばいかって言うと、タコの足の八本のうちの一本が生殖器やって知った時くらいやばい。

だってたこ焼きの中に入ってたかもしれへんってことやろ!?

それを"うわーおいしそう!"とか言うて今まで心の準備も何もせんと食べてたってことやろ!?

とりあえずやばい。

この前ふざけて、謙也の消しゴム床に叩き付けて遊んどったらめっちゃ怒られたし。

謙也は消しゴムをめっちゃ大事に使っとるし。

それを知ってるから余計に心が痛む。

あ、一番痛いのは恐竜か!

堪忍して、恐竜ちゃん!

「……ぉ…ぃ…」

って言うても首折れてもうてるしな…

「…なぁ…ぃ…」

消しゴムとしての存在意義はあるんやけどな…

首がな…

「おーい、たまご!」

『ぎゃあ!?け、謙也!』

突然目の前にずいっと謙也の顔が現れて、私は驚きつつも消しゴムを背に隠す。

『なんやねんこっち見んといてやエッチ、変態、痴漢、どスケベ!』

なんでそない言われなあかんねん

『やって謙也が…』

「もう授業終わったんにずっと動かへんから心配したったんやで、俺!」

『えっ』

もうそないな時間か。

チャイム全然気付かんかったわ…

『謙也のくせに優しいな、おおきに』

なんか俺複雑な気分

泣くで?とか言いながら拗ねた仕草をする謙也。

全然可愛くないことを自覚してほしい。

私ははよこの恐竜をどないするかっちゅーことを考えなあかんのに…

「そういえばさっきの消しゴムどないやった?めっちゃ可愛ぇやろ?」



ぎくり。



思わす自分の肩が跳ねたのが分かる。

『あ、おん、せやな!おかげで全然授業集中できへんかったわぁ』

消しゴムの対処法について考えとったせいでな…!

私はふるふると拳を握り締める。

「あいつの名前はアイリス言うてな、一見ただの恐竜に見えるけど実はめっちゃ貴重なモデルの恐竜でな!」

あぁ…はじまったわ、謙也の消しゴム熱弁会。

てか名前ついとったんやな

それはそうと、アイリスほんまにどないしよ。

新しいもん買うてくるにも、最短で渡せるの明日やし…

返すの忘れとったってことで今日一旦持って帰るか…

いやでも今日返さなあかんでな…

ほんならいっそ、失くしたって言うた方が…

「ほんでな、アイリスには兄弟がおってー、今日は持ってきてへんねんけどそいつらまた今度持って来たるわ!」

今は亡きアイリスへの想いを語る謙也は嬉しそうで、やっぱり楽しそうで。

『お、おん…頼むわ』

壊してしもたなんて、言い出せるわけなかった。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ