テニプリ

□アイリスがくれたのは
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とある平日の午前中。

「この問題には、この方程式を使って…」

チョークが黒板に走る音が教室内に響く。

眠たくて集中できへん私は、こっそりと目を擦る。

ちらりと前の席の謙也を見ると、真面目に問題を解いてる様子が見て取れた。

『(しゃあない、私もやるか…)』

謙也の集中を途切れさせるのも気が引けたから、自分もノートに向き合う。

『…』

白石くんは先生に質問しとるみたいで、話し掛けられへんかった。

私はノートにすらすらとシャーペンを走らせて…

『…』

走、らせ…て………。

『(あかん、解かれへん)』

くっそう。

てか、ここの問題私答え間違ってるし!

はぁとため息をつきながら筆箱から消しゴムを取り出して…

取り、出し…て………。

ってこのくだり二回目!

…消しゴムどっか行った。

筆箱の中をよく探しても、消しゴムは出てこん。

しゃあない、謙也に借りるか。

どうせ大量に持ってるやろうしな!

『なぁ、謙也』

授業中ということもあり、私は小声で謙也の背中を小突く。

「ん?たまご、どないしたん?」

ちょうど問題を解き終えたのか、謙也が爽やかな顔で振り返る。



ゴツッ



「痛っ!?なんでどつくねん!」

なんか無性に腹立ったから

理由あった方がましやわ

私にどつかれた箇所を擦る謙也。

絶対痛ないのにな。

オーバーリアクションなんやから、謙也は。

「ほんで何なん?問題解かれへんのか?」

解けんかったとしても謙也には聞かん

なんか今日扱いひどない?

そんなことあらへんけどなーなんて心の中で思いつつ、私は本題を口にする。

『謙也、消しゴム貸してくれへん?』

さっきまでの態度なんやねん

『頼むわ、今日一日貸して!』

「しゃあないな〜…特別やで!」

そう言うて謙也は私に消しゴムを手渡してくれた。

『おお!おおきに!』

「忍足、ゆで、喋んなよ〜」

「『はーい』」

先生に注意された私たちは姿勢を正してノートとにらめっこする。

謙也に借りた消しゴムを見てみると、さすが謙也というか…

恐竜の形の消しゴムやった。

しかも新品やんこれ。

結構ちゃんとできてるし。

まぁえぇや、思う存分使ったろ!

私は消しゴムを手に取り…

恐竜の頭をノートに擦りつけた。

おぉ、消える消える!

やっぱ頭は別格やな!

『ふぅ…』

結構綺麗に消えるやん、この恐竜消しゴム。

そんなことを思いながら問題を解いていく。

『(あ、また間違えた)』

再び消しゴムを手に取り、ノートに頭を擦り付ける。

すると、悲劇が起きた。

消す時に力入れすぎたんかして…

恐竜の首が、折れた。
 
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