テニプリ

□紫色のリンドウは
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「…落ち着いたかい?」

『うん…ごめんね、幸村くん』

窓から入る風が心地よい。

微かに花のにおいがする。

あれからしばらくするとたまごは落ち着きを取り戻し、今の状態に至る。

「今日も…いつもの…?」

『…うん』

いつもの。

俺がそう口にするだけで、たまごは暗い顔をする。

『仁王くん…今日も他の女の子と一緒に帰ってた…』

「…」

たまごの口から出た単語に僅かに反応する俺。

仁王。

仁王は、たまごの好きな人。

そして、俺の部活仲間。

そんな部活仲間は少々女癖が悪い。

毎回、仁王が別の女性とじゃれあっているのを見るたびにたまごは傷付き、俺の元へとやって来る。

そしてそんな傷付きやすいたまごを。

俺の前でいつも泣いているたまごを。

いつの日からか、俺は好きになっていた。

でも、言えない。

『にお…っうぅ…』

この想いは伝えることができない。

伝えてはいけない。

「たまご…」

だって想いを伝えると、君は泣くと思うから。

これ以上、君の泣いている表情を見ると、俺は俺じゃなくなるから。

だから、今だけは。

『やだ…やだよ…』

「…安心して…ほら、ね?」

俺はたまごの身体を優しく包み込む。

『うん…』

俺はたまごにまわしている腕に力を込める。

校庭に咲く、紫色のリンドウは音も立てずに揺れていた。



紫色のリンドウは
(愛しているよ、泣かないで)
(泣いている君が愛しすぎて)
(壊してしまいそうになるから)

***あとがき

紫色のリンドウの花言葉…あなたの悲しむ顔が好き
という意味なのです!
 
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