テニプリ
□紫色のリンドウは
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ガラッ
放課後、教室で日誌を書いていると教室の扉が開いた。
音のした方を見てみると、そこには自分の想い人、たまごが立っていた。
「…たまごじゃないか」
『…』
しかしたまごは俯いたまま、扉の前で立ち止まっている。
俺は不安になって、ペンを置いた。
たまごの方へ歩み寄るためだ。
すると、たまごは勢いよく顔を上げた。
目が合う。
それと同時に、たまごの目から涙が零れた。
『幸村くん…!』
俺は無意識のうちにたまごに両手を伸ばした。
たまごは迷うことなく俺の胸に飛び込んでくる。
今は少し、その純粋さが憎い。
小さな手でしがみついてくるたまごが愛しい。
俺の胸を頼るたまごが愛しい。
俺の腕の中にいるたまごが愛しい。
大きな目から溢れる涙でさえも愛しい。
…君は知らない、俺の本当の気持ちなんて。
「たまご」
俺はたまごの頭を撫でてやる。
そんなこと気にしていないかのように、たまごは俺の制服を濡らす。
…君は知らない、俺がどれほど君を想っているかなんて。
「たまご」
何度も名前を呼ぶと、たまごはやっと俺の顔を見てくれた。
その綺麗な、愛しい、濡れた瞳で。