テニプリ
□ヘリクツカレシ
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『…すぅ』
「…」
『ぐぅ…』
「…」
この状態をなんと説明しよう。
アイスの食べ過ぎで体調不良のたまご先輩。
そんな先輩のために暖房で部屋をあたためたり、沸かしたてのお茶を部屋に持って来たり郵便屋の相手をしているうちに…
当のたまご先輩は眠りについてしまったらしい。
することもなくなった俺は椅子に腰掛けて読書。
勉強を教えてほしいと頼み込んできた本人は人のベットで熟睡。
「…」
俺は本を閉じ、ベッドの方へ歩み寄ってみる。
すやすやと幸せそうな顔で寝息をたてるたまご先輩。
これが本当に先輩なのだろうかと疑うレベルだ。
でも、この幸せそうな顔を見ていても嫌な気はしない。
むしろ、なんとなく心があたたかくなるような…
あ、さっきこの部屋あたためたからか。
気のせいだ、絶対気のせいだ。
俺はたまご先輩のために淹れた、まだ湯気の立っているお茶を自分の喉に流し込む。
そして再びベッドの方へ近付き、たまご先輩の顔を眺める。
「…」
黙っていればマシなのにな、この人は。
俺はベッドの端に腰掛けながらそんなことを思った。
「変な顔」
言いながら、たまご先輩の頬を指でつつく。
「(やわらかい)」
予想外の柔らかさに、ふと笑みが零れそうになった瞬間。
『ん…』
「!」
たまご先輩が俺の人差し指を掴んできた。
「お、起きてたんですか?」
『…』
「…先輩?」
『…』
なんだ、寝ているのか。
「それにしても意外としっかりと掴むんだな…」
ぎゅうぅと握られた指を眺めてそうつぶやく。
『だって日吉くんずっと私のこと見てるんやもん』
「!?」
俺は弾かれたようにベッドを離れた。
たまご先輩が俺の指を掴んでいることによって、距離を取ることは阻まれたが。
『私こないに日吉くんに好かれてるって思ってへんかったわぁ』
「いやそういうのではなくて…!」
『ほな、なんでさっき私のこと呼んだん?』
俺は必死になって言い訳を探した。
「別に…!」
雰囲気に流されただけです
(可愛くなんかない、可愛くなんかない)