テニプリ
□切原赤也の葛藤
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もうとっくに授業は始まっているみたいで、校舎は静かだ。
テニス部の部室にたまご先輩を連れてきたところで、たまご先輩は声を発した。
『赤也、痛い…』
たまご先輩の弱々しい声に、ハッとする。
「あ、す、スンマセン!」
思わずパッと手を離す。
するとたまご先輩は、俺が握っていたところを擦る。
『ほんっとに赤也は…正直すぎるんだから』
「え?」
授業をサボることになることについて、怒られるかと思ったけどたまご先輩はそこには何も触れなかった。
『なんでそんなに怒ってるの』
困ったような表情で、たまご先輩は言う。
「せっかく先輩と一緒に登校できるってのに、ウザウザーがわざわざ名古屋からやって来やがって…先輩、喜んでるし…」
『私は蔵兎座と英語で話してみたかっただけで…!』
「俺だって英語話せるッス!俺とも話してくださいよ!」
なんか俺めちゃくちゃなこと言ってんな、なんて頭の隅で考える。
ホントは苦手科目だけどよ…。
『えっと、それはなんか違うっていうか、赤也と英語で話しても…あんまり意味ないって言うか…』
俺は聞いているのが辛くなり、たまご先輩を部室の角に追い詰め、両腕で逃げ道を塞ぐ。
『ちょっと赤也…』
たまご先輩は身を捩らせる。
でもそんなの逆効果っすよ。
「たまご先輩…」
名前を呼ぶとピクリと身体を揺らすたまご先輩。
「…アイ ラブ ユー」
ひどく和声発音な俺の声が部室内に響く。
たまご先輩が息を飲む音が聞こえた気がした。
「これくらいしか話せないっすけど、これだけ言えたらじゅーぶんッス」
ニッと笑いながら言ってやると、たまご先輩は顔を伏せる。
「たまご先輩…?」
たまご先輩の顔を伺い見てみると、たまご先輩の目に涙が溜まっているように見えた。
俺は何かいけないことを言ってしまったのかと、焦りを隠し切れない。
「え、と、あの、たまご先輩っ、俺そんなつもりじゃ…!」
『…So,do I.』
たまご先輩は何か呟いていたけれど、何て言ったのか俺には分からなかった。
切原赤也の葛藤
(たまご先輩、今何て言ったんすか!?)
(自分で考えないとだめだよ〜)
(そ、そんなぁ!)
***あとがき
So,do I.…私もです。
という意味なのです。