ヒロアカ

□アイを込めてアイさつを
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翌日。

「…」

僕は誰が見ても分かるくらい、あからさまに落ち込んでいた。

「(流石に調子に乗り過ぎた)」

昨日はソファーで寛ぐゆでが無防備で、可愛らしくて。

キスしたい、と素直に思ってしまったのだ。

「…はぁ…」

まだ一日が始まったばかりだと言うのに、もう既に帰りたい。

寮から校舎に向けて歩いている途中だけれど、帰りたい。

「(ゆでに合わせる顔が無い)」

昨日、僕はあのままオチていたらしく、そこからゆでを見掛けていない。

それにキスした直後、僕は苦し紛れに"挨拶だ"なんて言い訳をしてしまった。

「(馬鹿なのか僕は…?)」

今更後悔しても仕方無いのは分かっているけれど。

「…」

謝ろう。

しっかり謝って僕の誠意を見せるんだ。

「(この恋を、こんなところで終わらせたくない)」

そう思い顔を上げた、その時。

『…物間くん?』

背後から聞き覚えのある声がした。

恐る恐る振り返る。

「…」

情けないけれど、ゆでの顔を見るのが少し怖い。

『…ぉ、おはよ、物間くん』

昨日のことを思い出したのだろうか?

顔を少し赤くしながらも、伏目がちに目線を逸して僕に挨拶をしてくるゆでがそこに立っていた。

「(謝ろうと思っていた、けれど…っ)」

そんな可愛い顔を見せられたら、僕は…僕は…



チュッ



辺りに、昨日と同じリップ音が響いた。

『…!!』

だめだぁぁぁああ…!

謝るどころか僕は更に彼女にキスを…!?

「(いや、でもだって、ゆでが可愛くて仕方無いんだ)」

ちらりとゆでに目線を向ける。

ゆでは目を見開いてその場に固まっていた。

「(い、今からでも遅くはない!ちゃんと謝って…それから…)」

僕は気持ちを落ち着けるために、ひとつ深呼吸をする。

そして口を開いた。

「挨拶はこうだって、昨日言ったろ?」

僕は器用に、パチッとウインクを飛ばして見せた。

『な…っ』

だめだぁぁぁああ…!

素直に謝れる性格じゃなかったぁああ…!

素直に謝れればこんな苦労していないぃい…!

しかも何を呑気にウインクなんて飛ばしてるんだ僕は…!?

「あはははは、それじゃあまた教室で!」

頭を抱えて叫びたい気持ちを胸に秘め、僕は逃げるようにしてその場を去った。

『あ、物間く…』

「…」

あぁ…

ここまで来たらもう…

開き直るしかない…!
 
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