ヒロアカ
□触れた手、熱い指
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入寮後、部屋王を決めた俺達。
俺は割と本気で自分が優勝すると思ってたんだが、優勝は砂糖に持って行かれちまった。
「ハァ〜…部屋王優勝、自信あったのにな〜…」
『うわ瀬呂くん、でっかい溜め息だねぇ』
「ん?あ、ゆでか」
教室で一人項垂れていると、クラスメイトのゆでが近くへやって来た。
『部屋王は残念だったね〜…でも、瀬呂くんの部屋凄かったんでしょ?みんなから聞いたよ?』
ゆでは俺の部屋を見ていない。
ゆではあの夜、先に寝てしまっていたため、部屋王決定戦には参加しなかったのだ。
「砂糖のシフォンケーキに負けたけどな」
『あはは、根に持ってんじゃん!』
「ちげーし、拗ねてんだし…」
わざと不貞腐れたように言ってみると、あ!とゆでが声を上げた。
『じゃあ今日さ、瀬呂くんの部屋行って良い?』
「…は?」
俺は項垂れていた頭を起こした。
ゆでと目が合う。
『だめ?瀬呂くんの部屋、私も見てみたいなって思ったんだけど…』
「そりゃ構わねェけど…」
『じゃあ今夜行くね!んじゃ、また夜ね!』
「あ、ちょっ…」
ゆでの背中に手を伸ばすのと同時にチャイムが鳴った。
「…ゆで、俺の部屋来んのか…!」
今日はさっさと帰って部屋片付けっぞ!
俺は一人意気込んだ。
***
「うっし、片付いたかな」
風呂もメシも片付けも済ませたし、いつでもウェルカムだ。
「…」
今夜はゆでが部屋に来る。
部屋に来るっつっても、変な意味は微塵も無ェ。
残念なことに。
たぶんマジで"見に来る"だけだ。
下手すりゃ、
"わぁ凄いね!"
"だろ?"
"うん、じゃあおやすみ!"
で終わっちまうかもしれねェ…!
「(うわ〜何それ嫌だわ〜…!おもんなさ過ぎて引くわ〜…!)」
せっかくゆでが来んのに、そんだけってのはなんか寂しいっつーか。
誰だって、好きなヤツとなら長く一緒に居てェと思うもんだろ?
なんか面白ェこと考えとかねーと…
ゆでがすぐに帰りたくなくなるようなこと、なんか…
「(面白ェこと、面白ェこと…)」
コンコン
『瀬呂くーん、居る〜?』
何を思い付くより先に、ゆでが来ちまった。