ヒロアカ

□CUBE
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しばらく抱き締められたままで居ると、彼は突然私から身体を離した。

「あ、良いこと思い付いた!」

やだ

まだ思い付いただけなんだけど!?

良いことってなんだ、嫌な予感しかしない。

「ちょっとここで待っとけな!」

そう言って立ち上がろうとした電気くんの手を私は掴んだ。

「ん?どーした、なんか珍しいな」

『絶対アホなこと考えてるじゃん…やだ、行かなくていい』

「たまごバッカ!そこは"行かないで…"って、もっと寂しそうに言わねーと!」

誰が言うか!

思わず私は手を離してしまい、その隙に彼はサッと立ち上がった。

「すぐ戻るわ!」

そう言い残して部屋を出て行った彼。

私は特に気にせずに扇風機を独り占めする。

『あ〜…一人だと割と風が気持ち良いかも〜…』

身体を起こして一人、扇風機の前で涼んでいると彼が戻って来た。

そして何とも嬉しそうな顔をしている。

「っじゃーん!見ろよコレ!氷!普通の!」

彼の手には、キューブ型の氷がいくつも詰められたグラスが握られていた。

飲み物は入っておらず、本当に氷だけだ。

…中身忘れてるよ?

これでいいの!

なんだ、飲み物を入れ忘れている訳ではなかったのか。

電気くんは私の隣に腰を下ろす。

電気くんにも風が当たるように、私は扇風機を首振りモードに設定した。

「氷食ってっと、ちょっとは暑さマシになるんじゃね?」

そう言って氷を一つ手に取り、自分の口に放り込む電気くん。

私もそれに倣って氷を一つ頬張った。

「んん〜!夏って感じ!」

『これはこれで良いかも…!』

バリボリと音を立てて氷を噛む電気くんとは対象に、私は口内で氷を舐めて転がした。

冷たくて気持ちいい。

そしてコロコロと舌の上で転がしていると、あっという間に氷は溶けてなくなってしまった。

『これ好きかも!もういっこ…』

「たまご、こっち」

『んっ!』

顎を掴んで彼の方を向かされたかと思えば、突然キスをされた。

驚いている間に、彼の舌が私の唇を割って口内に入ってくる。

そして、私はひんやりとした感覚に驚いた。

彼から氷を口移しされたのだ。

『…』

「!」

顔を離そうとする彼のシャツを掴み、私は氷を彼の口内に返した。

氷くらい自分で取る、そう言おうとしたのだが、彼は気を良くしたのか私の腰と後頭部に手を回して固定され、唇を離すことは阻止されてしまった。

そして今度は彼の舌がまた私の口内に氷を乗せて入ってくる。

私達の熱で溶けた氷は、先程よりだいぶ小さくなっているようだ。

『んん〜…っ』

なんだか悔しくなって口内で氷を噛み砕く。

するとやっと唇を離された。

彼は私の顔を見るなり、ニヤニヤと笑みを浮かべる。

「なんだ、たまごノリノリじゃん!」

『ちっがう!』

赤くなる顔を見せないために私はまたそっぽを向いた。

「えー?じゃあもういらねーの?氷」

また一つ氷を取って、電気くんはそれを口に入れた。

『氷は、いる…』

「ん、よーふぁい(了解)」

口に氷を入れた電気くんの顔がまた近付いてきた。
 
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