ヒロアカ

□milk vetch
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※アニメ一期8話後のお話です。
(「こっからだ!俺はこっから!いいか!?俺はここで一番になってやる!!」の直後です←)



***



「クソが…ッ」

『あ、勝己くんお帰り〜!どうし…』

中学が一緒だった爆豪勝己くん。

学校帰りなのだろうか、雄英の制服を着たまま私の家へとやって来た。

そして彼の様子を見た私は言葉を失う。

彼の表情があまりにも憎悪で溢れていて、悲しくなったから。

とりあえず彼を私の部屋へと誘導し、私は飲み物を持って行った。

彼の隣に腰を下ろし、コップをテーブルに置く。

『ごめんね、コーヒーしかなくって。なんかお菓子食べる?』

「…」

私の問いかけに、俯いたまま特に返事をしない彼。

高校は別々だから彼が学校でどんな風に過ごしているのかは分からないけれど…

この様子は相当滅入っているみたいだ。

『(とりあえず何かお菓子を持って来よう)』

そう思って立ち上がろうとすると、ガシッと腕を掴まれた。

『勝己くん…?』

「…」

『(行くなってことか…)』

未だ俯いたままの彼の隣に、私は座り直した。

腕はまだ離してくれない。

「………ッソ…クソッ…!たまご…!!」

『うん…』

肩と肩が少し触れ、そこから彼が震えているのが伝わってくる。

「………俺は今日…ッ!デク…!デクの野郎にぃ…ッ!!」

ギリリと唇を噛み締める勝己くんを見ると胸が苦しくなり、私は正面から彼を抱き締めた。

勝己くんは中学時代から、やたらと出久くんに突っ掛かるから…。

話を聞く限り、それが高校に入ってエスカレートしているような気がする。

「…クッソがぁああ…!!」

相当悔しい思いをしたのだろう、苛立ちや焦りを含んだ彼の声色に、私まで泣きそうになった。

彼は私のシャツを力強く掴んでいる。

先程私の家にやって来た時に見た彼の頬には、涙の乾いた跡が見て取れた。

とても悔しかったんだろう。

『…我慢したんだね』

「…」

『頑張ったね、勝己くん』

少し身体を離して、彼の顔を両手で包み込み、目線を合わせる。

彼は未だ唇を強く噛んでいた。

『そんなに噛んだら、唇切れちゃうよ…』

私の言葉を聞いても唇を噛み続ける勝己くんを見ていられなくなり、彼の薄い唇に小さくキスをした。

「は…」

驚いた拍子に彼は唇を開き、噛むのをやめさせることに成功した。

『もういっぱい我慢したんだから、ここでは我慢しなくていいんだよ』

「…クッ………う…っ!!」

そう言って再度抱き締めると、今度は彼も力いっぱい私を抱き締め返した。
 
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