ヒロアカ

□窓際のパンジー
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出久くんがまた怪我をした。

突然、街に現れた敵(ヴィラン)から住人を守るために飛び出したんだって。

『右腕と両足骨折…』

病院のベッドで静かに眠る出久くんを見て、胸がズキズキと痛むのを感じた。

お見舞いの花とフルーツをテーブルに置いて、私はベッドの傍らのイスに腰掛ける。

『…』

ベッドは上体を少し起こしてある状態なので、彼の表情がよく見える。

目を閉じている彼はとても穏やかな表情だ。

『…ふふ』

思わず小さく笑みが溢れる。

母性本能を擽られると言うのだろうか…私はふわふわの彼の髪を撫でた。

彼の怪我はリカバリーガールの治癒で治るらしく、先程施術を施されたみたいだ。

学校以外にもこうして病院に施術しに来ているなんて、彼女はきっと毎日多忙なんだろうな。

『出久くん…』

私は腰かけたまま彼の、骨折を免れた左手を取る。

とは言っても掠り傷や切り傷がいくつか見受けられるので、優しく丁寧に包み込む程度だ。

すると突然その手をぎゅうっと握り返された。

「呼んだ?たまごちゃん」

驚いて出久くんの顔を見ると、彼は変わらず穏やかな表情で私を見据えていた。

『出久くん…!』

起きてたの、とか、手痛くないの、とか、色々言いたいことはいっぱいあるけれど。

『生きてた…良かった…!』

私はイスから飛び上がって彼を抱き締めた。

包帯やアルコールの独特なにおいの中にも、彼の優しいにおいがふわりと香る。

「あはは…これくらいで死なないよ。そうだ、少し離れて?」

彼の言葉に少し寂しくなりつつも身体を離すと、彼はベッドの角度をボタンで調整してくれた。

今度は完全に上体を起こして、彼は左腕を広げて笑い掛けてくる。

「おいで」

私が抱き着くと、彼は私の肩に左腕を回してギュッと抱き締めてくれた。

『待って出久くん、そんなに力入れたら怪我が…』

「そんなのどうだって良いんだ。今はたまごちゃんとこうしていたいから」

距離が近いため私のすぐ耳元で、いつもより低い彼の声が聞こえる。

なんだか擽ったいけれど、それが心地良くも感じた。
 
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