Resonance
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「何やこれ〜?デッカい絵ぇやなぁ」
王墓の中を歩いていると、壁一面の巨大な絵が目に入った。
「いつの頃のものだろう…レグヌムの鍾乳洞で見た天上界の文字もある」
「この文字、鍾乳洞のものとほぼ同じものね。なんとか読めるわ、ええと…」
アンジュが一つ咳払いをし、壁画の文字を読み上げてくれた。
「"初めは天も地も無く原初にただ大いなる創造神のみ在りけり。
彼 永劫の孤独を癒やすべく 己の肉体を世界とし 神々を生む。
世界と神々 長く共に在りけり。
然し卑しき神の溢れしとき来る 天は卑しき神を人と貶め地に落とす。
以後、天と地 隔たること いと長き"」
読み終えたアンジュに、おずおずとスパーダが挙手をした。
「あのぉアンジュさん…もうちょっと分かりやすく頼めねぇ?」
「つまり天上界は…いえ、この世界の全ては始祖の巨人から始まったと書いてあるの」
「始祖の巨人?この左側の大きな人型のこと?」
ルカの声に釣られて壁画の左の方を見ると、確かに大きな人型が描かれているのが分かる。
「そう…この世界の創造主ね。この世界の初めには何も無く、ただ巨人が一人居ただけ…そして巨人は一人ぼっちで寂しかったから、自分の体から世界と神々を生んだの。その後、神々は栄えたけれどその中から悪い神が現れたのね。だから天上界の神々は地上を作り、そういう悪い神達を隔離したのよ」
『へぇ〜…』
「そして天から下ろされて力を奪われた悪い神々は"人"となった…それから長い時間が経ったなぁ…と書いてあるの」
なんだか壮大なお話だ。
宗教とか聖書に載っていそうな感じ。
あんまり現実味がないかも。
『…あれ?ちょっと待って』
私はアンジュの話を聞いてハッとする。
「「!」」
隣に居たルカ、スパーダも目を見開いて私を見ていた。
「じゃあつまり、現世に生きる地上人は…」
「タマゴは…」
『私は…』
「「『転生者ってこと(かよ)…!!?』」」
ルカ、スパーダ、そして私の三人は揃えて声を上げた。
だって、元々 天上界に居た悪い神が地上に送られて、いまの地上人になったって言ったよね…?
じゃあ私や他の地上人も、元は神…つまり転生者ってことになる…のかな?
「ここに書いてあることをそのままの意味で捉えるなら…そうなります」
私達を見てアンジュは頷く。
『いやいや…待ってよ、私みんなみたいに異能使えないし…前世の記憶だっけ?…そんなの一切見たことないよ?』
「けど、ここにはそう書いてるわ…」
そう言うイリアに釣られて私は壁画を見上げた。
みんなは前世の記憶でこの壁画の文字を読んでいるそうだが、私には全く読めない。
私や他の地上人は、本当に転生者なのだろうか。
『あんまりしっくり来ないな…』
「そうよね。私も、ナーオスの図書館で初めて記憶の場に触れるまでは…自分が転生者だったなんて知らなかったもの」
アンジュが私を見て小さく微笑んだ。
「でもよ、そういう話ならタマゴに限らず、地上のみんなは自分達が神の子孫だって気付いてないよな?オレ達は前世の記憶があるから知ってるけどよ」
「そう考えれば転生者って別に特別でも何でもないよね。地上のみんなが全員転生者のはずだしさ」
「いいや、それは違う」
突然、ここまで黙っていたリカルドが声を上げた。