Resonance

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「さてと、適当に歩いて来ちゃったけどどうしようか」

『やっぱりまずは聞き込みを…』

「コーダは腹が減ったんだな しかし!」

コンウェイと私の話を遮り、コーダがぴょんぴょんと跳ねる。

『あぁ、言われてみれば確かに…!』

「ナーオスを出るずっと前から何も食べていなかったね」

「まずは食べたいんだなしかし!腹が減って動けないんだなしかし〜!」

『ふふ、分かった分かった!』

私はコーダを抱き上げる。

「じゃあまずは食事にしようか。何が食べたい?」

『私はせっかくだからアシハラ名物が良いな。リカルド達の言ってた 生のお魚も気になるけど…』

「ボクは生の魚は遠慮したいかな」

『そう?コーダは何か食べたい物ある?』

「何でも良いから早く食べたいのだ、しかし!」

生魚以外のアシハラ名物で出来るだけ早く食べられる物か…何かあるかなぁ。

辺りを見渡すと、道の先に"蕎麦"と書かれた看板が掲げられているのが目に入った。

『…麦…?何て読むんだろ。コンウェイ、あそこご飯屋さんっぽくない?』

「そうだね、近いし行ってみようか」

「メシの時間なんだな、しかし!」

私達は目的のお店を決めてそこへと歩いて行く。

ちらりとお店の中を覗くと何やら美味しそうなにおいがした。

「いらっしゃい!!今ならお席空いてるよ!」

『三人なんですけど、すぐに食べられますか?』

「あぁ、すぐに用意出来るよ!」

「入るのだな、しかし!」

『じゃあ入ろっか!』

私達はお店の人に案内されて、中へと入った。



***



「美味いんだな、しかし!」

『うん、美味しい…!』

「なかなか良いね」

私達は麺を啜った。

これはアシハラ名物"ざる蕎麦"…"蕎麦"と書いてソバ、と読むらしい。

パスタとも違うけれど、ほんのり甘いお出汁とあっさりした麺が絡んでとても美味しい。

コーダは"天ぷら"という揚げ物も追加してもりもり食べていた。

『涼しげな感じで美味しいね〜…!』

今の時期にちょうどいい。

コンウェイも蕎麦が気に入ったようで頷きながら食べていた。

「はは!気に入ってもらえて良かったよ!」

気前の良さそうな店主が笑顔で私達を眺めている。

「お姉さん達、蕎麦は初めてかい?」

『えぇ、実はこの町に来るのが初めてなんです』

「そうかいそうかい、いやぁ寂しい町だろう。昔はもっと栄えていたんだが…」

溜め息をつく店主を見て、コンウェイと私は目配せをした。

このまま何か、記憶の場にまつわる話を聞き出せるかもしれない。

『そうなんですね…どうしてこの町は寂れてしまったんですか?』

「ここ数年、各地で天変地異が起きているだろう?簡単に言えばそのせいだな」

店主は話を続けた。

「昔はたくさんの島に囲まれて景色もずっと綺麗だったんだが、年々海面が上昇して、今となっては島のほとんどが沈んでしまったんだ」

この話は確かルカやリカルドも話していたと思う。

私は頷きながら話を聞いた。

「大陸部が減ると、人間は新しい住処を作るために山を開拓する必要が出てくる。すると、山の方に住んでいる動物達の住む所がなくなっていく」

「…すると、動物と人間の共存が難しくなってくる…って話だね」

「あぁ、兄ちゃんの言う通りさ」

『なるほど…そうですか』

コンウェイと私を見て、店主はハッとする。

「あぁ、すまないねこんな暗い話。お姉さん達はどうしてアシハラへ?」

来た!

コンウェイと私は頷き合った。

『異国の文化や歴史を勉強してまして…その研究の一環で、来てみたんです』

「はぁ〜、そりゃまた…風変わりな…」

「アシハラ特有の文化について、何か知っていることがあれば教えてもらえますか?」

コンウェイと私の質問に、店主はうーんと唸った。
 
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