Resonance
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気を取り直して、エルマーナの取り引きに応じることにした私達。
「じゃあエルマーナ、取り引き成立ね?」
「ほい来た!ほな、その水路の奥から鍾乳洞に繋がってんねん」
「この奥が鍾乳洞?マジかよ、オレ全然気が付かなかったぜ」
「あかんなぁ兄ちゃん、観察力不足やで。案内したげるさかい、着いといで!」
嬉しそうに水路の奥に進んで行くエルマーナに、私達は着いて行くしかなかった。
「ほらほら見たって、結構綺麗やろ?」
『わぁ、なんか涼しくて心地良い所だね〜!』
「せやろせやろ〜?」
「へぇ…あの下水道の奥にこんな場所があったなんてな」
スパーダは感心しているようだ。
「あ…せや、そっちのお三方にもキチンと挨拶しとかんとなぁ」
エルマーナはリカルド、スパーダ、私を順に見回した。
「小さいのに随分礼儀正しいな」
『話す時もハキハキしててしっかりしてるよねぇ』
リカルドと私の隣ではスパーダが口を尖らせていた。
「何だよ、挨拶オレ達が最後かよ。あの隠れ家、オレが作ったんだぞ?」
「あ〜そうやそうや、そのへんもめっちゃ感謝してんねんで。ホンマどないお礼言うてえぇんか分からへんから、いっそのこと言わんでえぇかなぁと思うててん」
「言えよ!そこは!」
『っふふ』
「フン、面白い娘だ」
スパーダとエルマーナの即席漫才を見てリカルドと私は笑う。
エルマーナはそんな私達を覗き込んできた。
「それにしても自分等男前やな!美人さんもおるさかい美男美女揃とるやん!でも最初はまず名前聞いてぇや、せやないとモテへんで?」
「挨拶するって言ってんだから、おめェが先に名乗るのがスジだろ?」
スパーダが初対面の人に対する警戒心が強いのは相変わらずなようだ。
『(少し冷たい言い方にも感じるけど…)』
そんなスパーダにエルマーナはまた明るく笑って見せた。
「あーせやなぁ〜、自分の言う通りや!ウチはエルマーナ・ラルモっちゅうねん!」
エルマーナは素直に自分から名乗った。
い…良い子だなぁ…!
「オレはスパーダ・ベルフォルマ。これで良いか?」
「もう一人の男前さんは?」
「リカルド・ソルダート。傭兵だ」
「自分顔色悪いなぁ!」
思ったことをそのままハッキリと口にするところはイリアに似ている気がする。
特に悪びれた様子も無いので、エルマーナにとってはこれが通常運転なのだろう。
「そっちの姉ちゃんは名前何ちゅうん?」
『タマゴ・カステラです。よろしくね、エルマーナ』
「っ!」
笑いながら頭をぽんぽんと撫でる。
するとエルマーナは小さく肩を震わせてしまった。
『あっ!ご、ごめん、つい…怖かったよね』
私は慌てて手を引っ込める。
小さくて素直なエルマーナを見ていると思わず手が伸びてしまっていた。
そうだよね、初対面の人に頭を撫でられるなんて怖過ぎるよね。
私は反省しながらちらりとエルマーナを見遣った。
「いやいや!ウチこそ大袈裟な反応してしもたわ、堪忍なぁ」
へらっと笑うエルマーナに私は感謝した。
「ほんならよろしゅうしたってなー!」
エルマーナはそう言い残してルカ達の所へと戻って行った。