Resonance

□05
2ページ/16ページ




出発の準備を終えた私達はハルトマンと共に、彼の家の玄関先に立っていた。

「んじゃハルトマン!ちょっくら聖女アンジュ様とやらを軍の連中から助け出してくるぜ!」

「戦を前にしてもなお気負わぬその仰りよう…先代の若い頃に瓜ふたつ。嬉しゅうございますなぁ…」

「何だよ、それ皮肉か?どーせオレは家も継げない放蕩息子さ」

スパーダはハルトマンの言葉に唇を尖らせてそう言った。

「お坊ちゃま、家など問題ではございません。騎士としての立ち振る舞いが大切なのでございます」

「オレは騎士なんて柄じゃねーって」

「…それでもじいにとって、お坊ちゃまはいつだって可愛いお坊ちゃまでございます。またお顔をお見せ下さいませ」

「あぁ、また来るよ」

スパーダはいつになく優しい声色でハルトマンに声を掛け、手を振った。

「じゃあ行ってくるぜ!」

「行ってらっしゃいませ、御友人方もまたおいでください」

こちらを見て一礼するハルトマンに、私も頭を下げる。

『ありがとうございました!』

「さらばだじじい!メシ美味かったぞ、しかし!」

「じゃあ、お世話になりました」

私達はハルトマンに手を振り彼の家を後にした。



***



「聖女が連行されたナーオス基地は、南東にある憂いの森を越えた先か」

「はぁ…」

ナーオスの町を出てしばらくしたところで、ルカが溜め息をついた。

「どうしたルカ、元気ないんだな しかし」

『そうだね。ルカ大丈夫?』

コーダと私が首を傾げると、ルカは小さな声で話し始めた。

「ハルトマンさんとスパーダ見てたらさ、父さんと母さんが僕のこと心配してるんじゃないなと思ってね」

「そりゃしてんじゃない?アンタ家出同然だったし」

イリアは頭の後ろで腕を組みながらそう言った。

そんなイリアの隣でルカは不安そうにしている。

「そうだよね…イリアは家に帰りたいとか思わないの?」

「思わない。アタシは決めたの、帰らないって」

ハッキリと言い切ったイリア。

「前世の記憶でイヤな目に遭う人生なんてもうまっぴら!"アタシ"は"アタシ"の人生を歩くの」

こう思うのもなんだけど、格好良い生き方だなぁなんて思いながらイリアの話に耳を傾ける。

「他人に利用されるのも捕まるのもイヤ。創世力だっけ?マティウスより先にそれを手に入れるまで絶対に諦めない」

「で…でも軍や教団相手にずっと逃げ回るんだよ?僕等じゃ手に負えないと思わない?前世のことだって、出会うのは敵ばっかりだし…」

ルカは不安な気持ちを隠さずにイリアに伝えていた。

そんなルカにイリアは…

「じゃあアンタは家に帰ればいいじゃない」

そう冷たく言い放った。

『い、イリア…その言い方はちょっと…』

「アタシは…もう帰るに帰れない…帰りたくても帰れないんだから…」

「『…』」

か細く切ないイリアの声に、ルカと私は黙るしかなかった。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ