Resonance
□05
1ページ/16ページ
朝。
「そういやぁルカよぉ」
「な…なに?」
みんなで出発の準備をしていると、ふいにスパーダがルカに声を掛けた。
「"無恵"って一体どういう意味だよ?」
「そーよ、全然意味分かんないってのよ」
『確か昨日、ハルトマンさんとのお話にも出て来てたよね?』
あの時はルカとハルトマンの間でサクサクと話が進んで行ったから、なかなか聞くに聞けなかったのだ。
「ええ?タマゴはともかく、二人とも知らないの?」
「悪い?」
「…わ、悪くはないけどさあ」
「とにかく説明しろよ、天上界に関係するっぽいからな、知っておきてェんだよ」
「前は関係ない話はするなって言ったのに…」
『あはは…』
ルカって割とこういうの引き摺るタイプだよね。
しかも不満を口に出すタイプだ、意外過ぎる。
「あっら〜、ルカくんが独り言言ってるご様子ねぇ〜」
「ああ?なんだよルカお前、言いてェことがあんならハッキリ言いやがれ!」
「なななな何でもないよッ!話すよ!話すからさ…」
『(脅されてる…)』
ええっと、とルカは話し始めた。
「教団で使われていた不思議な魔法"奇跡"が、ある時期からパッタリ使えなくなったんだ」
「なんでよ?」
「それは知らないよ、天上界が消滅したからじゃないの?」
「だ・か・ら、なんで天上界が消滅したら奇跡が使えなくなっちゃうのかって聞いてんのよ、分かんないヤツねぇ」
「『!』」
ルカとイリアのやり取りを傍で見ていた、スパーダと私はそこでピンとくる。
「あぁ、地上人の信仰心を集めて天上界を維持してたのはそういう理由かぁ」
「そういうことだね」
スパーダとルカは納得したようで、にっこり笑っている。
「だから"無恵"ってか!」
『理解してみれば、割とそのままの意味なんだね』
あははと笑い合う私達にイリアは耐え兼ねたように声を上げた。
「…全然分かんないっての!アタシにも分かるように説明しなさいよ!」
「だからよォ、地上人がアレすっから、天上人が見返りにガーッてやったってことだろ?」
「ごめんスパーダ、それじゃあ僕にも分かんないよ…」
ルカが苦笑している。
『つまり…天上界は地上人の信仰を集めて、その見返りに天術の力を地上人に与えてたってことだよ』
「そうそう、オレが言いたかったのはそれそれ!」
「あ〜なるほど、その天術の効果が所謂お恵みで"奇跡"って呼ばれてたってわけね〜」
イリアはスッキリした顔をしている。
「そうそうそういうこと!分かったか、イリア?」
「なんだかアンタに偉そうにされるの死ぬほどムカつくんだけど…」
明るく笑うスパーダに、イリアは苦い顔をしていた。