Resonance
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ズズズ…
黒い影のようなものが男性の身体から出て来る。
一瞬にしてそれは辺りを覆い尽くし、部屋を黒に染めた。
「死ね!アスラ!!」
『アス…ラ…?』
聞き慣れない言葉に違和感を覚える。
「何だこりゃあ!?」
「に…人間じゃないじゃない!何よ、これ…」
スパーダとイリアは素早く武器を構えた。
男性の背後には黒い魔物のようなものが居て、それは大きな大剣を持っているのが見えた。
「ラティオの敵、同胞の敵、天上界の敵!!アスラぁあ!!コ・ロ・スぅう!!」
「うわぁああああ!!」
黒い魔物の咆哮が辺りに響いた。
***
「オ・ノ・レ…ア・ス・ラ…ア・ス…」
呻きながら、男性はドサリと地面に倒れ込んだ。
『はぁ…はぁ…ふぅ…』
戦闘が終わったのだ。
戦闘中の私は、無我夢中でトリガーを引いていた。
結果、私には傷一つついていない。
ルカ、イリア、スパーダ…みんなが私を庇いながら戦ってくれているのが分かった。
『(みんな凄かった…これが転生者の力…!)』
「一体何だってんだ…?それにアスラだって?」
「これって前世の因縁なの?ラティオとか言ってたけど…」
「ラティオ…あのアスラのセンサス軍と戦ってた相手、ラティオ軍…」
倒れた軍服の男を見ながらみんなで首を傾げていると…
「左様」
『!誰…!?』
背後から聞き慣れない声がした。
私達はバッと後ろを振り返る。
「先程の相手は貴様等と同じく、前世で神だった者…教団から連れて来られた者だ」
そこには、眼帯をした図体の大きい男が立っていた。
「神…?」
「まぁ天上人と呼ぶ方が正しいがな。なんだ?あのような力を振るっておきながら知らなかったのか?」
「じゃ、さっきの変身は前世の…神だった頃の姿ってこと?」
「なかなか察しが良いなお嬢ちゃん。全ての記憶を呼び起こし、前世の力を完全に取り戻した結果だ。…つまり"覚醒した"というわけだ。余程のことがないとそうそう覚醒等しないはずなのだが…な」
眼帯男の白々しい言い方にイラッとする。
初めからこの人は知っていたんじゃないだろうか。
だからこそ、ルカの前世に恨みを持つ軍服の男を"適性検査"として宛がい、前世の力を引き出した。
そう考えられる。
「つまりさっきの相手にとって、ルカと会ったことは"余程のこと"だったのね…」
『…』
"おのれアスラ!!"と、恨み憎しみの感情を剥き出しにしていた軍服の男を思い返す。
「じゃあもしかして…転生者同士、下手に出会わない方が良いかもってこと?」
「じゃ…じゃあ僕にも前世の姿を取り戻すことが…覚醒することが出来るの?」
「無論。ここはそのための研究所なのだ!しかしそのためには、更に転生者と戦う必要がある!」
色々と聞き捨てならないことを次々に話し始める眼帯男。
『待ってください!』
私は声を上げた。
『更に戦うって言ったって、今みたいに転生者が襲ってきたら…ルカ達はどうなるんです!?戦うって、そんなに簡単なものじゃありません!』
「フン、だから天術を使うんだろう。それに…"ルカ達"?随分と余所余所しい言い方じゃないか?」
目を細めてニヤリと笑う眼帯男に寒気がする。
けど、言うなら今しかない。
『…さっきも見たと思いますが、私は天術は使えません!転生者じゃないんです!だから、』
「"だから戦争になんか行きません"ってか?ハッハッハ!!」
『何がおかしいんですか!?』
声を上げて笑う眼帯男。
「おかしいとも。転生者であろうがなかろうが、お前ほどの戦闘能力があれば戦争でも役に立つさ!傭兵の中には似たような奴等が山ほど居る」
『そ、そんな…!』
「死にたくないなら死なないよう、強くなってくれたまえ。…おい、次を用意しろ!コイツ等は実戦で使えそうだ」
眼帯男は、もう私のことなど眼中に入れていなかった。
「そんな!僕もう戦えないよ…力も出ないよ…」
「ちょっとォ!死にたいの?しっかりなさい!」
ルカとイリアのやり取りが、どこか遠くで聞こえた気がした。