Resonance
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全ての始まりは、一人の少女との出会いからだった。
時は、ルカ・ミルダとイリア・アニーミが出会う数日前まで遡る。
***
「タマゴちゃん、お疲れさん!今日はもう上がっていいよ!」
私は王都レグヌムのとある酒場で働いている、一国民だ。
地元民はもちろん、旅の人達が訪ねて来るくらいには人気の酒場。
特に私は、旅のお客さんからお話を聞かせてもらうのが好きだったりする。
『ありがとうございます、お疲れ様です〜!』
軽く挨拶をして、職場を離れた。
『(あ、後で今日の晩ご飯と明日の朝ご飯買いに行かなきゃ)』
なんてことを考えながら自宅へと向かう。
「そっちには居たか?」
「いや、居ない。向こうで目撃情報があったそうだ」
「ならそっちへ向かうぞ!」
『…』
最近、国の傭兵…だろうか?
なんだか不思議な人達を街でよく見掛けるようになった。
『(これも"異能者捕縛適応法"のせい…なのかなぁ)』
異能者捕縛適応法。
異能者を隔離するために国が定めた法律。
これについて、あまり良い噂は聞かない。
捕縛された者は兵士として戦争に連れて行かれるとか、変な研究所に連れて行かれるとか。
…異能者とかよく分からないけれど、国が総出で探しているのだ。
きっと何か"大変なこと"が起こっているのだろう。
なんて、ぼんやりと頭の片隅で考えながら自宅へ足を向けていた。
曲がり角を曲がろうとした、その時。
ドンッ
「っ!」
『わっ』
人とぶつかってしまった。
その衝撃は強かったようで、ぶつかった相手は目の前にドサリと尻もちをついた。
『す、すみません!立てますか…?』
手を差し出しながらそう問い掛けて驚いた。
目の前の赤い髪の女の子が、虚ろな目をしていたからだ。
「………し、ぬ…」
『えっ!?ちょ、』
「…」
私が何を言うより先に、彼女はフッと気を失ったようにこちらに倒れ込んできた。
私は正面から彼女の身体を抱き留める。
『こ、こういう時ってどうすれば…とりあえず病院…!?いやでも近くの病院は夜間診療やってないしな…』
頭をフル回転させていると、彼女の足元に不思議な動物が居ることに気付いた。
「おいオマエ、どこか安全な所へ連れて行くんだな しかし」
『わ、喋った…!?でも安全な所って…うーん…』
「早く連れて行くんだな しかし!」
私は少し悩んだ後、彼女とこのペットを自宅に連れて行くことに決めた。
***
自宅に彼女とそのペットを連れて帰り、私は彼女をベッドに寝かせた。
熱が出ている様子でも意識を失っている訳でもない。
彼女は静かに眠っているようだ。
『(うーん、しばらく起きる気配はないかな…買い物行きたいんだけどなぁ…)』
しばらく考えた結果、私は置き手紙を残すことにした。
"少し買い物に出掛けます。すぐに戻ります"…と…
『これでいいか。ねぇねぇお猿さん』
「コーダはお猿さんじゃないぞ、コーダはコーダなんだな、しかし」
『じゃあ…コーダ、もし彼女が起きたら、このメモを見るように伝えてね。ちょっと私、買い物に行ってくるから』
「仕方無いんだな しかし」
『うん、よろしくね!』
私はそう言い残し、家を出た。