Best Friends

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てか謙也に頼まれて作ったんに、本人から感想聞いてへんやん!

誰が一番おもろく食レポできるかというミニコントを開いとるみんなをかぎ分け、謙也の元まで足を向ける。

『謙也!』

「ん?たまご!」

肩を叩くと、こちらへ振り返った謙也。

そんな謙也はリスのように両頬を膨らませとった。

『ブフッ!何やねんその顔、おもろ!』

ごくりとケーキを飲み込んだであろう謙也が向けてくるのは、とびきりの笑顔。

「めっちゃうまいわ!」

なんとなく身が固まって動かれへんかった私に構わず、謙也は再びシフォンケーキに手を伸ばす。

「もう一個食うてえぇか?」

『もう取ってるやん!』

「お、おぉ… スマン」

軽く謝りつつも、そのケーキを手放す気はないようで。

謙也は口いっぱいにケーキを頬張った。

『…』

そんな謙也を見とったら、自分でも頬が緩むのが分かった。

『謙也、あーんしたるわ』

謙也の手の中から残りのケーキを取り、私はフォークを謙也に向ける。

「んんっ!?…ゴクッ、な、なんでやねんっいらんわ!」

カァアと顔を赤らめる謙也がおもしろくて、ほらほらとフォークを向ける私。

「ちょっと、忍足くんにたまごちゃん!ウチも混ぜてぇな!」

「俺も俺も!」

小春ちゃんと一氏くんがやってきて、ウフフアハハと笑い出す。

『えぇで!はい小春ちゃん、あーん』

「あーん…っん〜♪あーんしてもろて更においち〜☆」

頬を押さえて言う小春ちゃんに笑っとったら、謙也もシフォンケーキをつついとった。

「ほな俺からは一氏にやな。ほれ、あーん」

「あーん」

謙也に対してわりと素直な一氏くんを小春ちゃんと笑いながら見守る。

すると突然後ろから肩を引っ張られ、振り返った先には白石くんがおった。

にこやかな顔で、ケーキとフォークを持って。

「ゆでサンには俺からな」

あーん、と一口サイズに切られたケーキを差し出してくる白石くん。

『私はえぇよ、みんなで食…』

「あーん」

『…あーん』

白石くんの有無を言わさん笑顔に屈して、シフォンケーキを頬張る。

ふわりと甘いケーキが舌の上で転がる。

「白石くんずるいわぁ、アタシもやったる〜☆」

『嬉しいわ、小春ちゃん!』

「はい、あーん」

『あーん!』

「俺もやったろ。オドレ、口開けや」

『あ…あーん』

「俺もえぇか…?あーん」

『あーん』

「ワシも感謝の意を込めてやらせて頂こう。あーん」

『あーん…!』

次々とケーキを食べさせられ、そろそろおなかが膨らんできた…

口の中もさもさするし…!

「お前らおもろいことやっとるやんけ、部長があーんしたろ」

ヒラゼン先輩が結構でかめのケーキを向けてくる。

『いや、もうそろそろ…』

「あーん」

『…あーん』

"あーん"にトラウマ抱きそうやわ。

そう考えながらもなんとか飲み込むと、目の前には笑顔の謙也がおった。

『も、もういらんからっ…』

「また作ってな、たまご」

謙也の口から発せられたのは恐怖のワードやなかった。

『謙也…!』

謙也、空気読める男やったんや!

私のおなかが苦しいのに気付いてくれとったんや…!

「これ、最後のひとつやけど…たまごにやるわ!」

恐る恐る謙也の手元を見てみると…

「あーん!」

案の定、シフォンケーキがあった。

しかも一口サイズどころやない。

『…』

「どないしたんや、ほれ、あーん!」

少しも悪意を感じへん謙也の笑顔に、私は大人しく口を開いた。

その日以来、部員の手作りお菓子が少しブームになったとさ。



(うぇぇ…もう無理動かれへん…)
(人工呼吸したろか?)
(セクハラですか?ハラテツ先輩)
 
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