Best Friends
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今日の部活も無事に終わり、私は部室の外の倉庫の片付けをしとる。
いつもは部活のメンバーと帰る流れやねんけど、今日はクラスメートと帰る約束をした。
『連絡来てへんかなぁ…おっ』
ケータイを見てみると、友達から連絡が入っていた。
内容文を見てみると…
"彼氏と一緒に帰ることになってもうた。ごめん。今度学食奢る!"
『…あぁっ!!』
なんやこの無駄な悔しさ!
彼氏に友達が取られた気がして悔しいっちゅーかなんちゅーか!
私はケータイの電源を切って、部室の中の自分の鞄にいれた。
「ゆでサン、帰れへんの?」
後ろから、着替えを済ませた白石くんが話し掛けてくる。
『おん、もうちょっとおるわ。みんなに先帰ってって言うといてくれへん?』
「分かった…俺今日は予定あるから残られへんけど、はよ帰りや?」
『おん!全然いけんで、おおきにな!』
「すまんな…ほな、お疲れさん!」
『おん、気ぃ付けてな!』
えぇい、今日は今から倉庫の掃除祭や!
私は勢い良くジャージの袖を捲り上げた。
***
『とぅるるっとぅるる〜♪』
ほんで私は絶賛倉庫掃除祭を開催中や。
部室の外にある倉庫やけど、寒くも暑くもないし、わりとすぐ終わるかも!
でも解散時間はとっくに過ぎてるし、あたりはかなり薄暗い。
みんなには先帰ってもらうように言うといたし誰もおらへん。
その証拠に部室は暗くて電気もついてへん。
私は自分のペースで倉庫を片付けることにした。
『あ!このブラシなおすとこ、ここちゃうのに…あ、これも!』
私はいくつものブラシやらラケットやらボールやらを順番に引っ張り出す。
地味に全部重い。
私は静かに汗を拭った。
『マネージャー、一人っちゅーのも寂しい話やなぁ…』
ぽつりと呟いた声はもちろん誰にも届かず。
その代わり、どこかから何か別の…
小さい、音のようなものが聞こえた気がした。
『ん?…気のせいか』
あまり気にせず私はブラシを移動させようと、肩に担ぐ。
すると…
…ガタッ…
さっきより大きく、何かが動く音が聞こえた。
『なんや…?』
振り返ってももちろん何もあらへん。
『誰か残っとるんかな?』
いや、でも部室は電気もついてへんし。
私は担いだブラシを倉庫に仕舞う。
ガタッ、ガタタッ…
また、さっきの音。
さっき微かに聞こえた音や。
それがだんだん大きくなってる…
てことは、近付いて来てるってことやんな…?
『…!』
私は突然怖くなり、整理整頓しようとしていた用具をまとめて倉庫に入れる。
『な、なんかここにおったらあかん気ぃする…はよ帰ろう』
無理矢理倉庫にモップなどを押し込んで、その場を去ろうとした。
が。
『あ…』
用具入れから少し離れたところにテニスボールが落ちとるのが見えた。
『うわ…出しっぱなしにしとったら朝の見回りの先生に怒られるしなぁ…』
私はテニスボールのところまで足を進める。
そしてテニスボールを拾おうと屈んだ時。
パリィィン!!
『!?』
突然の音に驚き振り返ると、部室の窓ガラスが吹き飛んでいるのが見えた。
私は反射的に倉庫の裏側に走り込み、身を隠す。
ガラス片はパラパラと音を立てて、倉庫の周辺に飛び散っとるわ。
『な…んで…』
そこから先は声にならへんかった。
もし、テニスボールがなくて私がそこにおったままやったら…
『…』
想像して身震いした。
ていうか、なんで誰もおらんはずの部室から音がして…
窓ガラスが割れることがあるん…?
『ガラスも寿命あるんかな?』
まぁたしかに年季入ってるとは思うけど、割れるほどやないやろ。
『ハッ…ほなまさか…幽霊?』
でも、なんかしっくりけぇへんな。
はっ、待てよ。
『もしかして…泥棒!?』
せや、そっちの方がリアリティがある。
幽霊なんておるわけあれへんし。
とりあえず、私はテニスボールをジャージのポケットに突っ込む。
マヌケな形にズボンが膨らむけど、それどころやない。
『どないしよ…今部室に入っていくのは危ないでな…』
でも、着替えも鞄も部室の中やし。
『ちょっと観察するか…』
私はその場にしばらく身を潜めることにした。