Best Friends

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あれから30分が過ぎた。

人混みのピーク時から30分経てば、さすがに人の数は減ってくる。

たまごのまわりにも、先ほどのように人はいない。

たまごは自由に歩ける喜びを感じながら、テニス部へと足を進める。

『って、あれ…なんで私テニス部向かってんやろ…』

自然とテニス部に向けていた足を止める。

『(でも特に入りたい部活とかあらへんしな…アメフト部とか身体強なるかな)』

うぅん…とパンフレットとにらめっこしている状態のたまごに、また声が掛けられる。

「おぅ」

振り返った先に居たのは、さきほどテニス部に入るからと入部を断った上級生。

『あぁ、さっきの…』

「ずっとうろうろしとるから、テニス部の場所分からんのかと思ってな」

『あ〜…』

「よかったらテニス部まで案内したるけど。どないする?」

面倒な人に捕まったな。

たまごはそう思いながらも作り笑顔を見せる。

『頼んますわぁ』

「おぅ、任せてぇな」

上級生から返ってきたのも笑顔だった。

「ちょっと離れとるけど、まぁしゃーないな。こっちやで」

そう言って踵を返す上級生。

たまごも大人しく着いて行く。

「テニス部人気やからな、もし入られへんかったら水泳部けぇへん?」

『あー、第二希望も決まってるんですよね〜』

「運動部で?」

『そうですね、アメフト部とか身体強なるかな〜とか思ってるんですけどね…』

「アメフト!?ぎゃっはっはっは!」

女子がアメフト部希望することがそんなに面白かったのか、上級生は腹を抱えて笑い出す。

『まぁせやから水泳部は入られへんかなぁと…』

どない頑張っても曝け出せる身体ちゃうわ、と内心で引き攣った笑いを見せながら断り続けるたまご。

「君おもろいな〜…ほら、ここがテニス部のブースやで」

『あ、もう大丈夫なんで…ありがとうございました』

テニス部の上級生に見つかる前にはやくこの場を去りたい。

そんな思いでいっぱいのたまごに対して、水泳部の上級生がテニス部の上級生を呼んできた。

「おーい、ハラテツ!なんかこの子入部希望やねんて!」

「え?女の子?」

きょとんとした顔で見られ、たまごも思わずきょとんとする。

その間も、はいよと椅子を引いて座るように促してくる水泳部の上級生。

『(この際この人は無視しよう)』

そして引っ掛かるのは"女の子?"という言葉。

ブースの紙を見てみるとそこに書いてあったのは…

『男子テニス部…』

たまごはふるふると拳を震わせる。

これは何の嫌がらせなんやろか。

水泳部入部を拒否したのがそんなにあかんかったんか。

もともとテニス部に入るつもりすらなかったんに…!

せめて女子テニス部連れてこいや!!

手持ちのパンフレットを床に叩きつけながら突っ込むたまご。

「…」

「…」

『…あ』

思ったより大きな声が出たことと敬語が外れてしまったことで、周りの人からも視線が集まる。

隣で入部手続きをしとる子たちももちろんたまごに視線を向けている状態。

「なんや〜修羅場かぁ?」

そんな中、またテニス部の上級生が増えた。

「あ、ヒラゼン先輩…」

「あ〜?女の子?」

視線を一心に身体中に浴びるたまご。

『す、すんません…』

たまごは恥ずかしくなり、身体を縮こめて水泳部の上級生が引いた椅子に腰掛けた。

『入部します…』

「え、でも君女子テニス部連れてけって…」

『いやなんかもう…ここがいいんです…』

「…っだぁっはっはっはっは!!」

頭を垂れて半泣き声で言うたまごに対して、大笑いを始めるヒラゼンと呼ばれた上級生。

たまごが再びきょとんとして顔を上げると、ヒラゼンと呼ばれた上級生は手を差し伸べる。

「おいでや、男子テニス部」
 
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